経団連企業行動憲章 CSRに関する規格や指針③

 CSRを推進する動きに対して、日本国内で進められたイニシアチブとして、まず挙げられるのが経団連企業行動憲章です。
 これはバブルの終焉期に続発した企業の不祥事と、世界で大きく取り上げられるようになった地球環境問題を受けて、1991年に日本経済団体連合会(当時、略して経団連)が作成したものです。公正かつ自由な市場経済の下で、民主導による豊かで活力ある社会を実現するためには、企業が高い倫理観と責任感をもって行動しなければならない。そういった理念を実現し、社会から信頼と共感を得るべく、企業に対して責任ある行動原則を定めました。

 具体的な行動原則としては以下の通りになります。

  1. 持続可能な経済成長と社会的課題の解決
  2. 公正な事業慣行
  3. 公正な情報開示、ステークホルダーとの建設的対話
  4. 人権の尊重
  5. 消費者・顧客との信頼関係
  6. 働き方の改革、職場環境の充実
  7. 環境問題への取り組み
  8. 社会参画と発展への貢献
  9. 危機管理の徹底
  10.経営トップの役割と本憲章の徹底

 こうして見ると、今の世の中となっては当たり前のことを謳っていますが、個人的に面白いと思うのが経営トップの役割を具体的に挙げている点にあると思います。そもそも経営トップが率先して、憲章の精神の実現に向けて経営にあたるべきであり、また不祥事が起きた場合は、経営トップが問題の解決を図って責任を果たさなければダメだとハッキリと周知しているわけですね。

 ちなみにこの企業行動憲章は時代や国際的な潮流に合わせて何度か改訂が行われ、1996年の改訂からは「実行の手引き」も作成されています。
 また2010年には、ISO26000の発行に先んじて、ISO26000と整合性を取るために大幅に改訂され、2017年の改訂では、2015年に国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標」の達成に向けた対応として、「Society5.0」の実現を掲げています。これは革新技術を最大限活用し、人々の暮らしや社会全体を最適化した未来の実現を目指したものです。

 基本的に経団連に加盟している企業が尊重・実践するべき憲章であるので、大きな企業が実践するイニシアチブとなりますが、大きな企業が率先してこれらを実践することで、社会の意識そのものをどんどんといい方向に変えて行ってもらいたいものですね。