生活保護費20兆円!? 中年フリーター問題

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15573

本当は待ったなしの問題なんですよね……。

就職氷河期に学生だった若者たちが今や中年となり、そしてそんな彼らのうちで多くが正規の仕事に就けないままフリーターとして生きています。
単純に考えて、今の人手不足の原因はここにあります。
第一次ベビーブームの世代が成人し、子どものを生む世代なったら、第二次ベビーブームになりました。
なので、本当に普通に考えれば、その第二次ベビーブームに生まれた子どもたちが大人になり、結婚適齢期になれば、第三次ベビーブームが来るはずなのです。
なのに、もはやベビーブームという言葉は死語となり、人口は減少の一途を辿っているのです。
もちろん、価値観の多様化や晩婚化など、ベビーブームがやってこなかった理由はたくさんいますが、ただやはり一番の原因は、第二次ベビーブーマーたちが経済的に苦しく、また人手不足と子育て環境不整備から、結婚して子育てをするということが難しくなってしまったことに尽きるでしょう。

ただ不思議なのは、今は空前の人手不足なんですよね。
そして、人手が足りない業種では賃金も少しずつですが上がってきています。上げないと、人が来ませんから。
にもかかわらず、中年フリーターが正規の仕事に就けるわけでもなく、生活が楽になるわけでもありません。

まあ、そこから単純に類推できるのは、やはり格差が広がり、完全にいわゆる勝ち組と負け組とで二極化してしまってきているんですよね。
つまり、新卒で一部の大企業に入れて、確実にキャリアとスキルを積み上げていった人々と、その経験を得られないままにスキルとキャリアを積み上げることが出来ずに低賃金で喘いでいる人々と、に。
就職氷河期の人々は、そもそも新卒で大企業に入れるチャンスがほとんどなかったために、最初からレースに参加することすら許されなかった人が多い世代です。しかも日本では採用のほとんどが新卒一括採用であるため、すでにスキルもキャリアも得られない仕事を長時間している中で挽回するのが難しい状況に追い込まれ、そして年だけを食ってしまいました。
この世代が割を食ったと言われるのは、そもそも与えられたチャンスが少なかったことにあります。

今、人手不足といわれていますが、本当の意味で人手不足である業種や業界は結構限られています。つまりは、精神的に辛い仕事であったり、肉体的にキツイ仕事であったり、そして賃金が極端に低い仕事です。
もちろんその中には、やりがいのある仕事やちゃんとした境遇を与えてる会社もありますが、キャリアやスキルのない人々の多くは、こうした一般的に人が少し敬遠したくなりそうな仕事しかあてがわれず、その中でせいぜい時給が少し上がるレベルの話を目標として頑張っています。
一方で、新卒で大企業に入ったという事実(またはそれに準ずるような運や能力)、必要な経験、スキルなどを兼ね合わせた人たちは、低賃金で苦しむ労働者の存在など、たとえ自社の関連会社の末端にいたとしても、その存在を想像する機会もほとんどなく、割と安寧で優遇された会社人生を歩んでいます。

明らかに問題は、この二つのグループの隔絶にあります。つまり、現状では人生の最初で下の方のグループに入ってしまえば、もう上のグループに入るのが難しい仕組みになり過ぎているのです。
もちろん、上のグループに入るためにどれだけ頑張ったんだと、努力しない、能力がない奴が悪いという意見もあるでしょう。
当然そういった個人の能力や努力の問題を無視するつもりはありませんが、ただそこを差し引いたとしても、あまりにもそのシステムは世代間的に、また与えられた教育環境的に、不平等過ぎます。

本当に今のまま、とにかく若いほうがいいという新卒一括採用制度でいいのか?
そもそも、白紙状態の若手を育てる事しか出来ない企業側の育成システムや、人の本当のポテンシャルをキャリアやスキルでしか見抜けない人事に問題はないのか?
業種間、業界間にある格差をもっと是正するような政策を政府はするべきではないのか?

考えるだけでも議論するべきことはたくさんあります。
職業訓練などで中年フリーターのスキルを上げる後押しをするのはいいと思います。でも、それだけでは全然足りません。
受け入れる側の企業の意識が変わらず、彼らの大部分を下のグループに押しとどめることは当たり前と考え続ければ、何も変わりません。

誰もが平等にパンを分け与えよとは言いません。ただ誰もが均等な機会を与えられる社会ではあるべきです。
中年フリーターの問題がこのまま進めば、当然人口の減少は進み続け、人手不足は解消されず、そのあおりで潰れていく、もしくは業務縮小を余儀なくされる企業は増えていくでしょう。
また中年フリーターがこのまま高齢になれば、生活保護費が20兆円に上るとも言われています。
実は、この問題を無視すれば、国の財政が崩壊するかどうかの話になっていくことは間違いありません。
生活保護費を減らせばいいと言い出す人もいるかもしれませんが、そんなことをすれば、海外からの日本の評価がガタ落ちするだけでなく、貧困問題や治安が悪化し、そもそもの生活の安全を脅かされる事態になることは必至です。

今の中年フリーターの問題を、当事者たちの自己責任だけに押し付けて、まるでそんな話は知らないとばかりにシラを切り続けるのは、ハッキリ言って愚か者のすること以外の何ものでもありません。
ちゃんと考えなければ、確実にすべての日本人の首を絞めることになるのですからね。

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