カゴメの「株主ファン化政策」

https://toyokeizai.net/articles/-/274357

「株」って何だか、お金儲けばかりしているみたいでイヤ……

そう思っている人って、実際に結構いると思います。かくゆうわたしもそうでした。ただわたしの場合、大人になり社会に触れ、また色々な知識を得ていくうちに、正直そうした考え方が少しずつ変わっていきました。
では、何がどう変わったのか―――――端的に言えば、株式が基本である資本主義制度って、実は自分自身で世界を担ってほしいと思う企業に対して応援することが出来る制度なんじゃないかって思うようになったんですよね。
ようするに、単にお金を儲けるためだけに株式を買うのではなく、この企業の社風が気に入ったとい理由や、この企業のプロジェクトをもっと世の中に広めてほしいといった理由で、自分のお金をその企業に預けて使ってもらう。そう考えれば、「株式制度」というやり方もまんざわ悪くないなと思ったのです。(短期的な投機による売り買いには制限を加えるべきだと思っていますが)

さて、そんな本来の株式制度にあるべきスタンスを企業の中枢理念として体現してくれているのが食品会社のカゴメです。
このカゴメという企業、面白いのが個人株主比率が異常に高いのです。現在、株主数ベースでは個人株主が99.5%を占めており、また、所有株式でも個人が60%以上を握っています。よく比較される飲料メーカー・伊藤園(25%)や調味料メーカー・キユーピー(26%)に比べて、同社の個人株主比率の高さは際立っているのがひと目で分かりますね。

大抵の場合、特に日本の企業の場合はそうですが、自社の株の多くを支援してる銀行や関係のある企業に保有してもらい、その一方で自分たちもほかの企業の大株主となって、お互い助け合う、つまり何か株主総会等であった場合に備えて、常に経営者側が賛成多数を獲得出来るような形にしているのが通常です。
確かに、このやり方だと会社を乗っ取られるリスクが低く、安定した経営を望めると経営者も考えるでしょう。
ただそれでは、当然、経営陣にはそこまでの危機感がなくなるので、企業そのものが他者からの意見にあまり耳を傾けずに保守的になりすぎる可能性が高くなります。

一方で個人株主が多いということは、それを高く買い取ろうとする第三者が現れたり、または不祥事や極端な減益などに対して株主がまとまれば、経営陣の入れ替えも頻繁に起こり得るというリスクが常に伴われます。
しかしその状況は、考え方によっては、それだけ多くの株主がいるということは、建設的な意見を言ってくれる株主が多くいるということであり、いわゆる自分たちの企業のスタイルや商品を好きだと言ってくれているファンがたくさんいるというメリットとして受け取ることもできるのです。

そしてそういった個人株主たちを自分たちのファン、つまり協働パートナーとして考えて、それを自分たちの政策の中枢にしているのが、このカゴメという企業なのです。株主と共に会社を良くして行こうという、つまりは単なる資本を集めるだけでなく、出来る限り多くの株主の意見を集め、それを自分たちの糧にしようという姿勢がそのまま形になっているんですね。
結果的にそうなったのではなく、意図的にそうしたというのは、その政策の方向性を決めた当時の経営陣の英断を称えるしかありません。いくら株式の理想と言えども、なかなか実際に行動することは難しいですからね。
ただこの形はうまくハマれば、消費者と企業との関係において非常に良好な関係を保てるモデルケースとなることは間違いありません。
株主への優待として多くの株主に自社の製品を試してもらう。→ 株主はそれを試し、その商品を購入したい。またはその商品を作っている会社をまた応援したくなる。→ 応援してもらった会社は、同時に貰った多くの意見を糧にさらにまたいい製品を作る。
といった形で、双方にとっていい形で回っていきますからね。
事実、カゴメの業績は堅調で、しっかりと利益も出しています。

個人株主比率なんて良く調べなければわからないことですが、調べてみるとその会社の形も見えてきますね。この個人株主比率という数字は、今後投資先を選ぶ際の一つの指標になってもおかしくないのかもしれません。