ビッグデータは誰のモノ?

ヤフーが自身のシステムで集めたビッグデータを企業に売りに出すと言い出しているのですが、これはどうなんでしょうかね?

https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2019/10/31a/

最近、リクルートが学生の内定状況の情報を企業に売っていたことが明るみになって問題になりましたが、いかに匿名とはいえ、そうした情報を使って商売をするのはどうなんでしょう?
確かに企業にとってはビッグデータは魅力的です。マーケティングをする上でも効率的ですし、そうした情報を持つ者こそが競争に勝っていくのだから、とにかくそれらを自分たちのモノにしてしまおうというのはわかります。
ただ、ビッグデータを一握りの大きな企業が握るということは、わたしたちの雇用や生活がその影響を受けるということで、ある意味私たち自身がそれに支配されていくことを意味するんですよね。
二十年ほど前に「帝国」で一躍世界に名が知れたマイケル・ハートさんが出した例がわかりやすいので、引用させていただきますと、たとえば熟練のタクシー運転手がいたとして、どこの道に行けば客がつかまるとか、どのルートを行けば早のかということを知っている彼は、自分なりのやり方で稼ぎを増やすことが出来ます。
でも、タクシー会社とIT企業が組んでタクシーの運転手それぞれのデータを集め始めれば、そうした熟練の知識は、すべてAIの指示で出すことが出来るようになるので、熟練である必要がなくなってしまい、こうした運転手が運転手の中で稼ぎを多くすることが出来なくなってしまいます。
あとは今のウーバとかを想像してもらえればいいのですが、熟練していなくてもいい運転手ということになるので、会社は彼らを安く雇うことが出来るようになり、利益がそれだけ上げられるようになります。そして、さらに自動運転になってしまえば、そもそも運転手などいらず、ビッグデータをもとに車が勝手にお客を連れて行ってしまうというシステムが出来上がってしまうのです。
技術の進歩だからしょうがないという人もいるのかもしれませんが、ただここで使われているビッグデータはそもそも熟練のタクシー運転手が集めたもので、その親会社やIT企業が集めたものではないんですよね。データを集めた運転手にそれなりの手当てが付くのならまだわかるのですが、そうして集められたビッグデータによって、被雇用者の賃金が結果的に下げられ、データを握る会社だけが儲かるという仕組みはどうかと思うのです。
ヤフーの検索で集められた情報だって、そもそもは検索した人たちがいるからこそ集められたものです。いわば、半分公共物であることは間違いなのです。
それなのに、そうしたものを商売の道具にして、ヤフーが全部持っていってしまうことは果たしてどうなんでしょう?
法律的には問題はないのかもしれませんが、これは倫理的には結構大きな問題だと思います。
ビッグデータについては、中国がやりたい放題で集めているので、それに対抗したいというのはわかるんですが、それならそれで、国際社会に対して、ビッグデータの集め方についての基準なりを決めるべきだと訴える方が先だと思うんですよね。
どうもIT関係の話は、技術が決まり事よりも先んじてしまうので、とても不安です。