「世界は贈与でできている 資本主義の「すきま」を埋める倫理学」 著 近内悠太

「世界は贈与でできている 資本主義の「すきま」を埋める倫理学」 
著 近内悠太

なるほどなぁと思う本でした。贈与とは、言葉の持つイメージよりもずっと世の中に溢れている。むしろそれを基軸として社会が回っているということがとてもよくわかりました。
特に不安定に置かれたボールの話がわかりやすかったですね。この社会というものは、不安定なところに置かれたボールのようなもので、そのバランスが崩れたら当然転がり落ちてしまう。そうしないためには、何かの外的な力が必要なんですよね。それが贈与だという話なんですが、災害時などのことを思い起こせば、とてもわかりやすい話だと思います。災害時には、物が流通しなくなったり、インフラが壊れたりします。でも、それがある程度時間が経てば、大抵は元に戻ります。つまり誰か知らない人が戻しているわけですね。そして、その誰か知らない人がしていることを想像して感謝することが大事であるのだとこの本は教えてくれます。確かにそれがわかれば、世の中に対する見方がかなり変わってきますからね。
個人的には、SF小説に触れている章がとても面白かったです。わたしもSF小説を書くのですが、なぜSFを書こうと思った動機と著者のSF観に近いものを感じたので、勝手に親近感を覚えました。