「君たちはどう生きるか」 著 吉野源三郎

「君たちはどう生きるか」 
著 吉野源三郎

宮﨑駿監督がこの本を題材に映画を作るということで、再び脚光を浴びた名著です。
一言で感想を言えば、もっと早く出会いたかった本でした。高校、大学、せめて二十代のときに出会っていたら、間違いなく人生の一つの指針となった本です。自分の子どもに読ませたい本、堂々の一位ですね。
物語そのものは、とても地味です。いわゆる少年のありふれた日常を描いているのですが、そのありふれた日常の中にこそ、わたしたちが普段は気づかないものの、考えるべきことが多くあることをこの本は教えてくれます。
なぜ世の中には貧富の差があり、わたしたちはその中でそれをどう捉えて生きていけばいいのか。良心があるのに、それを行動に移せないのは自分だけなのか。そんなことを押し付けがましくなることなく、おじさんのノートというヒントをそっと伝えることで考えさせてくれます。
自分は一人で生きているのではない。そうした当たり前のことを決してドラマチックな中ではなく、ありふれた日常の中で語っているからこそ、胸に突き刺さるのですね。
人と人との結びつきやモノの見方についてとても考えさせられる本です。

それにしても、これを戦争が始まる直前に書いたというのですからその慧眼ぶりに驚かされます。
当たり前ですが、軍国主義に染まりつつある戦前の日本にも、それに流されずに、良識を持ち、誇りに思うべき人たちがいたのだということを改めて感じました。
宮﨑駿監督は、この本を読んだ少年が現代の少年の話を作っているそうですね。楽しみ過ぎます。