「バック・トゥ・ザ・フューチャー」

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
1985年/アメリカ

この映画を子どもの時に観てから映画が好きになったので、わたしにとってはとても思い出深い作品です。
もう何度も観ていますが、今一度観直してみました。
やはり面白いですね。シナリオ的に言えば、タイムトラベルに関する矛盾はあるものの、筋としてはほぼ完璧というか、無駄がまったくありません。ダイアローグにしても、そのすべてが緻密に計算し尽くされていますし、またそのダイアローグがそれぞれのキャラクターをうまく表しています。
エンターテイメント映画を勉強するには、これほどの題材はないのではないでしょうか。
未だに、デロリアンのデザインが斬新でカッコよく思える点で、キャラクタービジネスとしても成功していますしね。
過去に戻って、自分の両親に会ってしまったら? そして、その恋路を邪魔してしまったら?
そんな何てことのないアイデアから、よくもここまで面白く仕上げていると思います。
冴えない父親と主人公であるマーティが自分を重ね合わせることで、うまくテーマも作り上げていますしね。

ただ観直してみて思ったのは、今のエンターテイメント作品と比べると、安定し過ぎているような気もしました。まあ、子ども時代にあれを見たわたしの世代からしてみると、80年代のエンタメ作品が醸し出す安定感というか、安心感はもはやノスタルジーすら感じて、その感情そのものこそが心地いいのですが、もしかしたら、若い世代には、それはそれで冗漫でつまらなくも見えてしまうのかもしれませんね。
派手にCGを使いまくる昨今の映画に慣れ過ぎてしまうと、派手な映像が当たり前であり、多少訳が分からなかったり、何が起こっているのかが分かりにくい方が、今の若い世代の子たちにとっては当たり前の世界であるので、受け入れやすいのかもしれません。
まあ、わたしにとっては、特殊効果はあくまで作品の中で必要な時にだけあればいい、そういう意味ではこの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という映画の特殊効果の遣い方は間違っていないと思うのですが。
そもそもこの映画で、現代として基軸となっている1985年がもう35年前ですからね。古くなってしまって当然であるし、1985年と1955年のギャップで笑わせるところが、1985年がもうレトロになってしまっているので、そういう意味では若者はついていけない部分があるかもしれません。マイケル・J・フォックスもリー・トンプソンも当たり前ですがみんな年を取ってしまいましたしね。

今回観なおしてみて、思ったのですが、主人公のマーティーの父親役の演技が意外と上手いということ。この人のあの冴えないながらも大げさな演技がうまくマーティとの対比になっており、実は物語そのものの一つの肝になっているのでは、と思いました。