「同調圧力 日本社会はなせ息苦しいのか」 著 鴻上尚史 佐藤直樹

「同調圧力 日本社会はなせ息苦しいのか」 
著 鴻上尚史 佐藤直樹

やや日本の社会をディスりすぎているような気もしなくもないですが、概ねこの本で言っていることは正しいと思います。
コロナ禍でとても息苦しい思いをした人はたくさんいると思いますが、なぜ息苦しいのかをよく説明してくれている本です。
個人的にも考えていたことをこの本を読んだことによって頭の中でうまく整理出来たような気がします。
特に「社会」と「世間」の違いを明示することによって、日本の何が息苦しいのかを解き明かしていく話のもっていきかたにはとても納得しました。
「世間」・・・自分に関係のある人たちだけで形成されている世界
「社会」・・・自分に関係のない人たちで形成された世界
もっとわかりやすく言うと、「世間」とは自分が所属している家族や、学校、会社などの関係であり、「社会」は電車に隣り合わせになった人や、エレベーターの中でたまたま乗り合わせた人たちとの関係です。
それで、日本人の大半は「世間」でしか住んでいないため、「世間」の目をこれでもかというほどに恐れ、個人がないという話です。そうした感覚がコロナ禍になってさらに露わになったという話なのですが、確かにコロナじゃなくてもこの話はよくよく自分の普段の生活を考えるとわかる話です。
一番わかりやすいのが会社ですね。
会社は年功序列やジャンダーなどで暗黙の了解で秩序がなされている組織です。
いくら就業規則が決まっていても、会社としての絶対な空気があり、残業は強要され、他部署の仕事なども契約書に書いてなくても持ち込まれます。
欧米ではこれはありえない話なんですが、日本では誰が決めたというわけでもなく当たり前の話なんですよね。
むしろそれが「おかしい」という方が変人扱いされて、爪はじきされてしまいます。
この見えない暗黙のルールが日本人にはたくさんあって、普段意識していなくてもそれによって雁字搦めになっている。
実際に、マネジメントをする側は規則によってではなくて、ほとんどの場合、人間関係などの暗黙の了解で動くことが多いんですよね。
そして、それがいわゆる忖度というやつなんです。
いわれてみれば、確かに安倍元首相も多くの政治家も自分たちの「世間」の中でしか生きていない気がします。

確かにコロナ禍において、この「世間」の圧力が感染を抑えたという事実はあります。
ただこれは日本人が考えている以上に、この「世間」によって無意識に行動させられているって怖いことなんですよね。
実際、「世間」の圧力に負けたのか、日本は先進国でも圧倒的に自殺率が高いですしね。

「世間」に対抗するのはとても難しいです。
「社会」を主張するしかないのですが、よっぽどメンタルが強く、能力がないと日本の社会で生きていくことは難しいでしょう。
ただ自分がどこか「世間」に従っていると意識するだけでも、もしかしたら窮地に立たされた時に逃げ道を作るヒントが生まれるかもしれません。

この本、今売れているそうですが、今だからこそ多くの人に読んでもらいたい本ですね。