学術会議任命拒否問題 菅総理が狙うもの

学術会議の問題が話題になっていますね。
菅総理が6人の新会員候補の任命を拒否したことに端を発しますが、問題はこの6人の候補がみんなかつて安倍政権がやってきたことに対して批判的な意見を言ってきた人たちだからです。
当然左派寄りの人たちからは批判の声が噴出し、これに応える形で右寄りの人たちが左派寄りの人たちを叩いています。
もちろん菅総理もこうなることくらいはわかっていたでしょう。
むしろわかっているからこそやっていて、そこに意図があるのは、自分たちに対して批判は言わせない、という空気を作り出すということだと思います。
説明責任を求められた菅総理の記者会見の内容がすべてを物語っていますね。。。
菅総理は記者会見で、端的に言うと、「学術会議の在り方に問題があるからこそ、そして十億もの税金を払っている組織であるからこそ、そこに一石を投じたいが故に任命拒否をした」と言っています。そしてなぜその人たちを狙い撃ちしたかという話については、個別の拒否の理由は「総合的俯瞰的な考え」と曖昧な言葉だけを使い、肝心な具体的な説明はしませんでした。
これでは説明責任を果たしているとは言えません。
むしろ説明するつもりなどそもそもなく、「学術会議の在り方」を問題にすることで、論点をズラそうとしているのが明らかではないでしょうか。
10億円というキーワードや、政府から学術会議の人たちがお金を貰っている、しかもその人事の在り方がおかしい、という話になれば、一般の人たちは任命拒否の話よりも、そっちの方に批判がシフトして炎上する、右寄りの人たちに左寄りの人たちを攻撃するための餌を与える、という状況が作り出せます。
菅総理とその周辺が狙っているのはこうした状況を作り出すこと自体なのでしょうね。
話をうやむやにして自分に文句を言うなという暗のメッセージを送る。
文句を言えば、おいしい飴は食べさせない。
そうした状況が当たり前なんだということを内外に示すことで、周りの忖度を喚起させ自分の権力を大きなものにしていく。
安倍総理がずっとやっていたやり方ですね。傍から見ていた菅さんがそのまんま踏襲したという感じなのでしょうか。

どうしても10億円や税金というキーワードの方が大きくなってしまい、問題の本質がズレて行ってしまっていますが、問題は明らかに忖度政治を続けるというサインを内閣が出しているという点です。
もちろん学術会議の在り方そのものがそれでいいと言っているわけではありません。
変えるべきところは変えるべきですし、もっと国民にとって透明感のあるものであるべきだと思います。
でも、学術問題の在り方と今回の任命拒否の件は明らかに別の問題です。
学術会議の在り方を問題するのなら、まずそのことをアナウンスし、ではどうやって委員を決めるのかをキチンと説明して、そのプロセスを国民に開示するべきです。
そのプロセスを経ずに、いきなり自分に対して批判的なことをいう人だけを狙い撃ちして任命しない、それでいてその理由を学術会議の在り方のせいにするのは、明らかに理屈的におかしいです。
それにそもそも学術会議とは、科学技術が戦争に貢献してしまったことへの反省を踏まえて作られたものであり、その提言は政府の意見を補完するものではなく、時には批判し、監視するべき役割が与えられているものです。
それが政府の意見をそのまま忖度する人だけの集団になってしまえばどうなるでしょうか?
科学技術がまた軍事にどんどん利用されるのではないでしょうか?
原発などの危険なものに対してもかつて震災前がそうであったように安全神話だけが推されるのでしょうか?
右とか左とか関係なく、そうした状況は国民全員にとってとても危険です。

総裁選前に菅さんは言うことをきかない官僚は左遷することも辞さないとハッキリと言っていました。
権力者に意見も言えなくなってしまう国は果たしてどこに向かってしまうのでしょうか。