大人の男のわたしが、メッチャ感情を揺さぶられたプリキュアのエピソード

娘が二人生まれてから、娘の付き合いでそれまでまったく観ていなかった「プリキュア」をしばしば観るようになりました。
テレビで現在進行中で放映されているものだけじゃなく、過去のシリーズもDVDをレンタルして観たりしています。

最初は「ちょっと辛いかも」と思いながらも、観ているうちにプリキュアはシリーズにもよりますが、概ねテーマがしっかりとしており、多様性をキチンと描いている上にストーリーもそれなりに作り込んでいるので楽しんで一緒に観ています。(似たような作品はさすがにちょっとキツイのですが)
結果、最初は映画に出て来る何十人もいるプリキュアがみな同じに見えていたものが、恐ろしいことに半分ぐらい名前と顔が一致するようになりました。

そんな中年になって突然訪れたプリキュアライフを送っているわたしですが、何気なく観ていた一つのエピソードに大人げなくもものすごく感情を揺さぶられてしまいました。
それは2012年にから13年にかけて放映されていた「スマイルプリキュア」の第18話「なおの想い! バトンがつなぐみんなの絆!!」です。

あらすじを簡単にまとめると、

物語はまず体育祭でリレーの選手を誰にするかという話し合いから始まります。
その中で、クラスで一番足が速いなおはクラスのみんなに期待されています。
でも、勝つことだけを目的とする雰囲気を嫌ったなおは、自分が出る条件として足の遅いメンバーと一緒にやると言い出します。
結果、なおをはじめとする、みゆき、あかね、やよい、れいかというプリキュア5人で走ることになるのですが、クラスの人たちはビックリです。なにしろ、なお以外の4人はそれほど足が速くなく、特にやよいは絵を描くのは得意なのですが、足はクラスで一番遅いのですから。

当然なお以外の4人は戸惑います。でもなおは勝ち負けではなく一生懸命やることが大切なんだとみんなを説得し、結局なおがコーチとなって、5人で練習することになりました。こうして始まった練習で、やよいも少しずつ走るのが速くなり、ついに体育祭前日をむかえます。練習を通じてみんなの心もひとつになり、やよいもやる気になりました。でも、たまたまクラスメイトが自分の悪口を言っているのをやよいは聞いてしまいます。そのため、やよいの心は不安になっていきます。

そして、体育祭の日、ついにリレーが始まります。でも、そこへアカオーニが現れ、バッドエナジーを集め始めました。みゆきたちはプリキュアに変身、アカンベェに挑みます。アカンベェに苦戦するプリキュアを見て、弱いものが力を合わせてもダメだと悪口を言うアカオーニ。思わず自分のことを重ねてショックを受けるキュアピース(やよい)ですが、キュアマーチ(なお)が反論します。みんなで力を合わせればできないことはない。その言葉の通り、力を合わせたプリキュアに敵はいません。プリキュアは逆転を開始、アカンベェを退けるのでした。

いよいよ女子リレーが始まります。最初に走ったあかねは2番でみゆきにバトンをつなぎます。みゆきはれいかに、れいかはやよいにバトンをつなぎました。やよいはみんなに抜かれていきますが、最後まであきらめません。そのやよいの気持ちに応えるかのようにクラスメイトたちが声援を送ります。そしてやよいからアンカーのなおにバトンはつながれました。なおはスゴイ勢いでみんなを抜いていき、ついにトップに立ちます。みんなの努力を無駄にしたくなったんですね。その姿はとてもカッコいいです。そして、そのまま1位でゴールして大団円かと思った瞬間、なおはゴール前で転んでしまいます。ビリでゴールはしましたが、みんなに申し訳ない気持ちになって涙を流すなお。そんななおにみゆきたちは抱きつき、一緒に涙を流すのでした。

とてもシンプルな話です。
でも、とても大事なことを訴えかけてくるエピソードです。
勝ち負けじゃない。これはプリキュア全体に貫かれているエピソードですが、リレーという分かりやすい競争を舞台にそのことがとてもよく描かれています。
大抵こういう話の場合は、最後は勝って終わってチャンチャンという話になるのですが、ここで負けるというのがいいです。しかもやよいのせいで負けるのではなく、勝ち負けじゃなく、一生懸命やることだとずっと言い続けてみんなを引っ張ってきたなおが転ぶことで。
傍目にはパッと見とても残酷な話に見えますが、なおが泣く中で、みんなが駆け寄って一緒に涙を流す。言葉はなくても、これだけで人間生きていて何が大事なのかを教えてくれます。観ている方も、勝って喜ぶ以上のものを5人が手に入れたことが感じ取れるんですね。

勝ち負けばかりがフューチャーされる世の中にあって、勝つことよりも尊いものがあることを教えてくれるエピソードです。
それがプリキュアであっても何であっても、いいものはいいのです。
子どもにみせてとてもよかったと思わせる話でした。