ミャンマー軍事クーデター問題 態度が問われる日本政府と日系企業

政府、対ミャンマーで苦慮 米国とスタンスに開き
キリン、ミャンマー合弁解消へ 国軍系企業に申し入れ

ミャンマーの軍事クーデター問題は、中国が絡んでいるだけあってなかなか解決の糸口が見えませんね。案の定、国連は中国の反対で強い非難が出来ず、ほとんど打つ手なしといった様子です。

その中国としては、インド洋からエネルギーを運ぶためのパイプラインをミャンマーを横断する形で建設していて、このパイプラインこそが今後の中国のエネルギー対策を左右するものの一つとなっているので、ミャンマーを間接的に支配するに越したことはありません。すでにミャンマーの輸出最大国は中国であり、経済的に首根っこを掴んでいるので、政治的にも首根っこを掴みたいところなのでしょう。

ミャンマー国民の大多数が民主主義を望んでいるのに、軍人たちが自分たちの特権と立ち位置を守るために外国に半ば国を売り渡しているもの同然なのだから最悪です。今考えれば、ロヒンギャを虐殺していたのも国軍で、スー・チーさんは見て見ぬ振りをしていると国際的に非難を浴びていましたが、見て見ぬ振りをしていたわけではなく、まだまだ軍部の力が強過ぎたために、いつクーデターを起こされるかわからず、どうにかしようにもどうにも出来なかったんですね。

さて、現状は欧米諸国も経済制裁以上のことをすることは難しそうです。民衆が立ち上がるのを待つしかありませんが、軍部が一枚岩で固まっている限りは難しいですね。軍部に武力で対抗出来る反政府勢力がミャンマー国内にはありませんからね。

そうなるとやはり対外的な圧力を加えていくしかないのですが、そこで今何げに国際的に期待をされているのが日本……なんですよね。

実は日本は欧米諸国とは違って、スー・チーさんら民主主義勢力だけでなく、国軍側とも接触を取り続けており、交渉出来る立ち位置にはいるんです。

ただこれは実際日本が経済的な利益のために立ちまわっていたからにすぎない関係であり、日本がどうにかしようと思うのなら相当腹を括って労力を惜しまずに交渉をしなければいけません。では果たして今の日本に民主主義を守り抜こうという気概や意欲があるのかと考えれば……残念ながらどう想像してみても日本がそうやって世界の外交で大活躍を姿が思い浮かびません。経済支援を打ち切るという声明は出しましたが、それは欧米諸国に足を揃えるという意味合いが強く、それ以上のことを積極的にやっていこうとか、少なくも発信していこうという空気がまるでありませんものね。

第一国軍との繋がりも単に経済的にうまく立ち回ろうという理由がアリアリなのが透けて見えています。そもそも民主主義を標榜する国としてそれだけプライドを持っていれば、欧米諸国のように国軍との関係なんてとっくに断ち切っているでしょう。

ていうか、こういう民主主義が問われるようなことが起きるたびに感じるのですが、日本政府はそもそも自分の国が民主主義国家であるということをどう思っているのでしょうかね……。どうも常日頃の言動を見ていると、欧米諸国から言われているので仕方なく民主主義国家を演じているのであって、自民党の本音は、やはり戦前回帰にあるのでは、と穿った見方をしてしまいます。

民主主義国家であるというのは建前で、あくまで家父長制的な感覚の維持、あわよくば戦前価値観の復活を目指して、とにかく現状の既得権益をうまく保全出来るように国家としての倫理観よりも経済を優先に考えているような気がします。

ミャンマーの国軍とずっと関係を維持していたという話なんて、こうして考えるとそうしたスタンスをすべて物語っているような感じですね。そもそも経済的合理性のために関係を維持していたのだから、今になってそれを使ってどうにか民主主義の復活を!と考えているのではなく、「国軍と関係を続けていたことで、これからも経済活動をどうにかやっていける。ラッキー」という感覚なのかもしれません。もちろんそんな本音を漏らしてしまうと内外からブーイングされてしまうので、そんな気持ちはお首にも出さずに、神妙な顔をしながらもダンマリを決め込むとは思いますが……。

我が国のことながら、透けて見えるそのスタンスにガッカリ感が半端ないのですが、ただ希望がまったくないわけではありません。

ミャンマーのクーデターを受けて、国軍系の企業と提携して経済活動をしていたキリンビールが、その当該企業との提携を解消することを発表しました。新たに違う企業を探して提携を図るとのことですが、この決断は素晴らしいと思います。

細かい内部の話はわかりませんが、グローバルに展開する企業にとっては、国際的に批判されるような行動は、もはや慎むのが当たり前だということが分かっているんですね。
リスクマネジメントがうまく作用していると思いますし、企業としてのメッセージも明確に伝わってくる行動だと思います。

まあ、政府よりも企業の方が先に世界の情勢を理解して動いていくというのは、日本らしいといえば日本らしいのですが、いい加減政府も場当たり的ではなくキチンとした哲学を持って行動してほしいです。アメリカの言いなりになって自衛隊を出すよりも先に、外交で日本が世界に貢献できることってたくさんあるはずですしね。

軍隊を持つことで初めて自立が出来るなど考える前に、まずは自分たちが平和的な手段で何が出来るのかを考えて行動してほしいです。それをして初めて、成熟した国家として自立していると他の国から認められるのですから。

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