なぜスーパーヒーローは売れなくなってしまったか

ヒーロー雑誌が苦境 男の子なら通る道、じゃなくなった

「てれびマガジン」や「てれびくん」が全然売れなくなっているという話ですね。
確かに昔は割と本屋の店頭にあったものですが、本屋そのものが町から消えていますし、最近見かけなくなったものの一つですね。
それだけじゃなく、ヒーローモノの玩具や関連商品の売り上げも年々減っています。

なぜスーパーヒーローは売れなくなったのか。理由としてあげると、まず少子化が言えるでしょう。
団塊世代Jr.の世代に比べて半分以下ですからね。この時点でそもそも購買する分母が大幅に減っているので苦しいです。

それに加えてYouTubeやゲームなど子どもたちの興味が多様化しているというのも一因として挙げられるのでしょうね。
でも、誰もが同じものを観て熱狂するというよりも、自分自身に合ったものを見つけやすくなっていると考えれば、これは社会的見地に立てば好ましいこととも言えるのですが。

ただそうなると、いわゆる戦隊モノや仮面ライダーに子どもたちを惹きつける吸引力がなくなったという話にはなってきます。
そして、その事実は、何となくは分かってしまう話ではあるんですよね。
ようするに単純に毎年のように同じようなことが繰り返されているので、子どもたちが単純に飽きているんじゃないかと思われるんです。
「鬼滅の刃」が小学校低学年や幼児などにも受け入れられたのは、物語の面白さもさることながら、彼らにとって目新しさがあったからです。
でも仮面ライダーや戦隊モノは、毎年新しいものに変わりますが、基本的に似たようなものが続くものなので、子どもたちは最初の一年はハマっても、だんだんと同じようなことを繰り返しているということに気付いていき、次第に興味を失っていってしまっていると推察出来るんですよね。

これは間違いなくプラットフォームビジネスの限界を表していると言えると思います。
ようするに今のスーパーヒーローものの多くは、かつて大ヒットしたものをシリーズ化したものが多く、基本的にその冠をもとに焼き直しをしているものです。
これは、80年代くらいから始まったシステムですね。
元々は仮面ライダーやゴレンジャーなどの戦隊モノが始まりで、子どもたちを飽きさせないために、一つのシリーズが終わったら、冠につく名前と基本スタイルをそのままに新しい物語を始めるというやり方が生み出されました。
なぜそれが生まれたかというと単に視聴率を取ったり、関連商品を売るために極めて効率的だったからです。
それはそうですよね。最初から「仮面ライダー」という冠があれば、それを、観ていた人たちが勝手に次の作品も観てくれますからね。

こうやって一つのプラットフォームを作り、あの手この手で見せ方を変えながらずっと長続きさせていくというスタイルは、玩具会社などを巻き込んで一つのビックビジネスとなっていきました。
特撮では、仮面ライダー、戦隊モノ、ウルトラマンなど、アニメではガンダムやプリキュアなどがこれに当たります。
そしてそのうちにこれらのプラットフォーム化された作品の一部は一年周期で入れ替わるという習慣が生まれ、玩具会社は毎年新しい商品を作っては売るという戦略を取り続けているのです。

もちろんそれは立派な商売であるので、大量消費を目的とした作品づくりそのものはどうかとは思いますが、否定は出来ません。
ただあまりにそのやり方が露骨となり、当たり前になってくると、子どもたちは気付いてくるのです。前と同じじゃんと。
すると、同じことを繰り返していくうちに、子どもたちは次第に飽きていってしまう。
あまりにプラットフォームにこだわり過ぎてしまったために、その飽きのサイクルが短くなってきているんですね。
子どもたちを飽きさせないためのプラットフォームシステムが、今や子どもが飽きてしまう原因になってしまっているとは、皮肉な話ですね。
「仮面ライダー」や「戦隊モノ」はプラットフォームとしてちょっと厳しくなりつつあるのかもしれません。
「ガンダム」や「プリキュア」も安泰ではないでしょう。
「ガンダム」の関連商品の主な購買層はもう40代ですし、「プリキュア」の売り上げもピークアウトを迎えています。

ヒーローモノが斜陽を迎えているのは、少子化や興味の多様化が大きな要因であることは確かです。
でもそれと同様かそれ以上に既存のプラットフォームに頼り過ぎ、新しいプラットフォームを築いてこなかったことに大きな問題があると思います。
バブル崩壊後、新しいことをする挑戦をせずに、既存のやり方に倣いすぎたのです。
それまでのやり方が常に正しいということから一度外れないと、新しいものは生まれせん。
今やもうネットで繋げば簡単に海外のコンテンツが見られる時代です。
「仮面ライダー」もいいと思いますが、早く新しいプラットフォームを見つけないと、本当に日本の特撮は衰退してしまいますし、アニメ産業も段々と縮小していくことを余儀なくされるでしょう。
経済的なことを考えざるを得ないのは分かります。
でも長い目で見れば、まず新しいものを作り出していくことで人材が育ち、また彼らが新しいものを作っていくというサイクルが生まれるんです。
業界全体のことを考えると、目の前のことをいつもどおりにこなすだけじゃなく、新しいものを自分たちが作っていくんだという気概が必要なんだと思います。まだ匙を投げる時間ではありません。作り手も玩具会社もみんなでスクラムを組んでどうにか今の閉塞的な状況を打破するために思い切ったことやっていってほしいですね。