「機動戦士ガンダムUC虹にのれなかった男」

「逆襲のシャア」と「ユニコーン」を繋ぐブライト・ノアを主人公にした漫画ですね。
ブライトさんが語り手だけに戦闘シーンはほとんどなく、あくまで、非公式に査問にかけられているブライトさんの回想という形で話が進みます。
興味深いのが読んでいく中で、改めて脇役であるはずのブライトさんの役割がガンダムシリーズにおいて重要だったということがわかってくるという点です。
ガンダムシリーズのメインテーマは、あくまでロボットのドンパチや戦争の悲惨さではなく、人の進化です。
ニュータイプという言葉を手がかりに人がよりわかり合えることへの希望を描いています。
そしてニュータイプとして、アムロやシャアの活躍は有名ですね。ただニュータイプを語る上で大事なのは、一般的な人間、つまりはオールドタイプの視点が比較の上で大事になってくるのです。
そして初代、Z、ZZ、逆襲のシャアとメインストーリーに出ずっぱりだったブライトさんは、主人公たちの近くに絶えずいながらも、物語上、艦長という役割だけでなく、オールドタイプの代表としての役割も担っていたというわけですね。

面白いなと思ったのが、アムロ、カミーユ、ジュドーと続く変遷で、ブライトさんはいつも彼らがガンダムに乗るようになっていく姿を目撃し、兄や父に似たような立場にいながらも、結局はその背中を眺めることだけしか出来ずに、後悔に苛まれているという点です。
確かに言われてみれば、ブライトさんの立ち位置は常にそこにあり、そしてその力を発揮しつつもニュータイプとして覚醒していく若者たちを見守ることでしか出来ない役割であるんですよね。
内気なアムロ、激情型のカミーユ、底抜けな明るさを持ったジュドーと、タイプの違う三人の少年たちが自分に覚醒した力に戸惑いつつも、もがき苦しんでいる一方で、一足早く大人になっていたブライトさんもまた見守るしかないオールドタイプとして、彼の立場なりに悩んでいたということがよく分かります。
最終的に話が実の息子のハサウェイのことに及び、ハサウェイのとった行動でブライトさん自身が査問にかけられ、答えを出すように迫られているという構図は皮肉である一方で、話としては深さを感じますね。

それにしても漫画そのものが基本的にブライトさんの回想による一人称だったので、逆に新鮮でした。
バックグラウンドがしっかりとした外伝的な作品にしか使えない構成ですが、これはこれでそもそものファンが読むということを想定している以上は、全然アリなやり方だと思います。
ユニコーンと同じ福井晴敏さんが原作を書いているので、使われている言葉も小説っぽく、漫画では珍しく文字によって想像を掻き立てる作品でした。

関連記事:
「機動戦士ガンダム THE ORIGN MSD ククルス・ドアンの島」
「機動戦士ガンダム GROUND ZERO コロニーが落ちた地で」