「交響詩篇エウレカセブン」著 片桐人生・近藤一馬/BONES

メディアミックスの成功例としてよく語られる作品ですね。
アニメの評価が高いことはよく知られていますが、個人的にはそれに負けず劣らずこの漫画版も好きです。
特にエンディングの終わり方は、ちょっと切ない漫画版の方が好きですね。

この作品が広く受け入れられたのは、ひとえにテーマがわかりやすく、そこを徹底的に深掘りしているからです。
「好きって何?」「信じるってどういうこと?」
単純な気持ちを突き詰めていくからこそ、誰の心にも響く作品になっているんですね。

特筆に値するのは、ヒロインであるエウレカのキャラ設定。
コーラリアンという舞台となっている星の先住生物が人を理解するために作ったヒト型コーラリアンであるために、人の感情がよくわからない。
ようするに白紙の状態なんですよね。それがレントンと出会うことで人を理解し始める。
でもコーラリアンが知りたいのは種としてヒトが利用できるかどうかで、それぞれの個体そのもの感情ではないわけです。

エウレカが人の感情を知っていくにつれて、コーラリアンの意図も明らかになっていき、その相乗効果によってテーマが深掘りされていくていう仕組みになっているわけです。
これは非常にうまい構成ですね。
良い構成とは、単に物語がわかりやすいとか、面白さだけを追求すればよいというわけではなく、その物語にとってのテーマ性をいかに伝えられるように作り込むことなんですよね。
そういう意味では、この物語は非常に優れた物語ですね。

レントンとエウレカと線対象に置くようにドミニクとアネモネを配置していること。
また子どもであるレントンとエウレカと比較するようにホランドとタルホを使うことで大人の心情を表現している点も物語をより深いものにしていると思います。

この作品も知る人ぞ知る作品ですが、間違いなくもっと評価されていい作品ですね。