「ディープフェイク ニセ情報の拡散者たち」 著 ニーナ・シック

「ディープフェイク ニセ情報の拡散者たち」 
著 ニーナ・シック

フェイクニュースがはびこるようになって久しいですが、本書はそのフェイクがいまやディープになり過ぎていて(ディープフェイク)、もはやどうしょうもないところまできていることを様々な事例をもって競輪を鳴らしています。
まず本書を読んで驚いたのは、ディープフェイクが発達したのは、やはりポルノからであり、ポルノ業界ではもはやディープフェイクが当たり前のようになっているという事実です。
確かに、ちょっと前まではアイコラを張り付けただけの、すぐにそれがフェイクだとわかる代物が中心だったのに、今やAIのおかげで本物と見まがうくらいの質になっているようですね。
まずは有名な女優やアーチストなどが被害に遭ったという話ですが、今や誰でもがその被害に遭う可能性があり、しかもこれがどんどんと拡散されてしまうので、手立てがないようです。

そしてポルノで磨かれた技術が政治に転用されている。
中でもロシアは群を抜いていて、もはや国家戦略としてディープフェイクを使っています。
もちろん、ウクライナ侵攻があった今となっては、ある程度想像がつく話のなのですが、具体的なエピソードを聞けば聞く程酷いです。
まあ、ロシアの場合は冷戦時代からの筋金入りなので、驚く話ではないのですが、ここ十数年のことだけを見ても、ロシアがどれだけ西側諸国にフェイク塗れにすることで国際社会を混乱に陥れようとしてきたのかがこの本を読むとよくわかります。

しかも困ったことに、中国を始め、ロシアのやり方を真似る国もどんどんと出て来ており、西側諸国の中心であるアメリカでトランプ大統領が登場し、フェイクを流しまくるという事態にまで発展しましたからね。
なかなか、厳しい社会になりつつあるというのが現実のようです。
AIが発達したおかげで、本物と見まがわないほどの偽動画が誰でも簡単に作れる世の中になってきつつありますからね。
こうした動きをどうにかしようと、ファクトチェックをする組織も増えては来ていますが、何分、やはり数が足りないようです。

ディープフェイクに対抗するには、つまるところ、見る側のわたしたちがそれに引っかからないように意識を高めていくしかないんですよね。
そのための教育をどのようにしていくのかが今後の焦点になっていきそうです。

ディープフェイクが出回れば出回るほど、社会分断が深刻化するのは目に見えています。
それによって利する人間がディープフェイクをさらに進化させて撒き散らしていくのです。
実際、新型コロナウイルスが蔓延した際には、確かに酷かったですしね。

AI技術が色々とわたしたちの生活に恩恵を与えてくれるのはいいのですが、それは諸刃の剣なのだということをわたしたちはよく理解しておく必要がありますね。