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厳選名著紹介

「1972年からの来訪」 著 黒川甚平

「1972年からの来訪」  著 黒川甚平 不思議な感覚のする話でした。 あさま山荘事件から二十数年後の話なんですが、その頃の学生運動をやっていた人たちが久方ぶりに集まり、そこで過去の記憶を蘇がえさせいくというストーリーです。 失踪事件を交えて、ミステリーとオカルトっぽい雰囲気が混じるような形で進んでいくのですが、そこに学生運動当時のリアリティのある話が差し込まれていくので、読んでいる人間をいい意味 […]

「ブラッドライン」 著 黒澤 伊織

「ブラッドライン」 著 黒澤 伊織 まず様々な国を横断するような形で(戦争を行っている2国は架空の国ですが)、世界の矛盾を浮かび上がらせようという試みが面白かったです。 自分のアイデンティティに近いものを書くのとは異なり、これだけ広い視点でもって話を語るというのはかなり難しいと思いますが、そこを恐れずに敢えて語っていく作者の作家としての姿勢というか、熱意に敬意を評したいですね。 こうしたチャレンジ […]

「憂鬱なペンギン」 著 アンドレイ・クルコフ

「憂鬱なペンギン」 著 アンドレイ・クルコフ 90年代に書かれたウクライナ人作家の作品ですね。 一見不思議な印象を残す話です。 個人的には、星新一さんのショートショートを長編にして、さらに不条理さをつけ加えればこんな風になるのかな……などと考えながら読む進めました。 話のキーは、売れない作家が新聞社に生きている人間の追悼記事を書くように求められ、それをこなしていくという点です。 これはなかなか面白 […]

「消失の惑星」 著 ジュリア・フィリップス

「消失の惑星」 著 ジュリア・フィリップス これは傑作でした。 社会テーマ性や文学性が高いだけじゃなく、いわゆる読ませる本でしたからね、ほとんど非の打ちどころがない作品です。 まずこの作品について触れなければいけないのは、舞台がロシアのカムチャッカ半島というところ。 名前は聞いたことがあるけれど、どういうところなのか全く想像がつかない場所ですよね、一般的に。 個人的にも、昔国語の教科書に谷川俊太郎 […]

「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたか」 著 鈴木 忠平

「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたか」 著 鈴木 忠平 現役時代に三冠王を3度も獲得した落合博満さんの監督時代の話ですね。 作者は当時の中日ドラゴンズの番記者なのですが、落合監督本人だけでなく、選手や球団関係者などから多くの証言を拾っていき、結局落合博満とは何者であったのかということを一冊の本を通じて浮き上がらせていきます。 監督時代の落合さんの一般的な印象といえば、勝つため妥協をせず、投 […]

「スマートな悪 技術と暴力について」 著 戸谷 洋志

「スマートな悪 技術と暴力について」 著 戸谷 洋志 この話は、実はわたしが日々違和感と恐怖を感じていたことでした。 タイトルにあるように最近「スマート」という言葉がスマートフォンの普及とともに広がっていて、あたかもスマートであることが正しく、何人もスマートさを目指さなくてはいけないという風潮すらあります。 実際本作でも触れているように、政府はスマートな社会を目指すと明言すらしていますからね。 本 […]

「昭和16年の敗戦」 著 猪瀬直樹

「昭和16年の敗戦」  著 猪瀬直樹 総力戦研究所の話ですね。 総力戦研究所とは、真珠湾攻撃によってアメリカとの戦争が始まる少し前に開設された内閣総理大臣直轄の研究所のことなんですが、各官庁・陸海軍・民間などから若手エリートたちを選抜して集めて、総力戦体制に向けた教育と訓練をしていたところですね。 総力戦とは、つまり軍人だけが戦争するのではなく、民間も産業界もみな協力して戦争に望むという戦い方で、 […]

「ベリングキャット デジタルハンター、国家の嘘を暴く」 著 エリオット・ヒギンズ

「ベリングキャット デジタルハンター、国家の嘘を暴く」  著 エリオット・ヒギンズ ネットにある動画や画像などの、いわゆるオープンソースを分析することで事実を突き詰めていくNGOの話ですね。 日本ではまだあまり知られていませんが、すでにこの集団が欧米のマスメディアの在り方を変えています。 本を読んでまず驚いたのは、この本の作者であり、ベリングキャットの創設者であるエリオット・ヒギンズ自体は、そもそ […]

「『色のふしぎ』と不思議な社会」 著 川端裕人

「『色のふしぎ』と不思議な社会」 著 川端裕人 色覚の話ですね。 先天色覚異常症というのは、昔からある病名で、昔は石原式という検査を学校でやった方もいると思います。 当事者でなければ、あまり覚えておらず、詳しくなることもない話ですが、ただこの本を読むと、色覚というのは正常/異常とくっきりと分けられるものではなく、色々な見え方がする人がなだらかにおり、境界線が極めてあいまいだということがわかります。 […]

「マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か ♯Me Tooに加われない男たち」 著 杉田俊介

「マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か ♯Me Tooに加われない男たち」  著 杉田俊介 ジェンダー平等を説明するために、いわゆるマジョリティの男性に向けて書かれた本ですね。 通常、ジェンダーやフェミニズムと銘打った本は、どうしても女性が手にとって読むことが多いのですが、あえて男性に向けて新書で書いたという点で画期的な試みであると思います。 本の内容としては、ジェンダーやフェミニズムといっ […]