「明治十四年の政変」 著 久保田哲

「明治十四年の政変」  著 久保田哲 伊藤博文、大隈重信、福沢諭吉……もはや教科書やお札でしか知らない明治の政治家や論客がこんなにも人間臭い攻防をしていたとは知りませんでした。 確かに世間的にそれほど知られていない話ですが、大久保利通暗殺後に、誰が権力を握るのかを考える上で、明治という時代の分水嶺になった出来事であることは確かですね。 面白いのは結果的には大隈重信が政府から追放されるのことになるの […]

「岩倉使節団 誇り高き男たちの物語」 著 泉三郎

「岩倉使節団 誇り高き男たちの物語」  著 泉三郎 「岩倉使節団」という言葉は当然中学生くらいのときから知っていましたが、具体的にそれがどんな旅であったかまでは正直よく知りませんでした。 ただぼんやりと当時の政府の首脳が近代化された西欧を見て回り、西欧化つまり富国強兵と殖産興業を進めていかないと考えるに至ったこと、その後そうした使節組の首脳たちの変化が征韓論争において西郷たちとの軋轢を生んだという […]

「木戸孝允」 著 松尾正人

「木戸孝允」  著 松尾正人 維新三傑に西郷隆盛と大久保利通とともに名を連ねる木戸孝允に迫った本です。 木戸孝允と言えば、幕末における桂小五郎時代のことはわかるけれど、木戸孝允になってからはイマイチ何をやったのかわからないという人が多いと思います。 まあ、実際、映画や小説で取り上げられるのは、桂小五郎時代の話ですし、池田屋事件や禁門の変、それに薩長同盟などドラマティックな場面がどうしても印象に残っ […]

「アラバスター」 著 手塚治虫

手塚治虫大先生の隠れた名著ですね。 「差別」というテーマをここまで露骨に取り上げている作品も非常に珍しいと思います。 まず設定として、黒人の人気オリンピックだった主人公が白人の女性に振られた挙句犯罪者となり、その復讐のために透明人間になろうとするというのがすごいですね。 しかも失敗して、皮膚が透けて見えるグロテスクな見た目になってしまうという、この設定だけで手塚先生のすごみがわかります。 表題のア […]

「三億円事件奇譚 モンタージュ SINCE 1968.12.10」 著 渡辺潤

未だ解決されていない三億円事件をモチーフにした作品ですね。 三億円事件を扱っているというだけで非常に興味深い話ですが、よくぞここまで話を広げたなとその想像力に驚きました。 話も実際に事件が起きた東京・府中をはじめ、長崎の軍艦島や沖縄、北海道と日本各地に飛ぶのでとても楽しむことが出来ましたね。 本当にあった事件をネタにしているだけに、話に現実感があって、食い入るように一気に読み進めることが出来ました […]

「ジブリの文学」 著 鈴木敏夫

スタジオジブリの名プロデューサーである鈴木敏夫さんのドキュメントエッセイ集です。 ジブリといえば、どうしても宮﨑駿監督と高畑勲監督の二人の存在が大きいのですが、この本を読むと改めて鈴木さんがいなければ、ジブリがなかったといっても過言ではないことがわかります。 そもそも宮﨑監督との最初のエピソードからしてすごいですね。 アニメージュの編集者として、宮﨑監督の密着した鈴木さんでしたが、商業主義的なアニ […]

「藤村多希 ――明治を生きた産婆――」 著 渡辺せつ子

「藤村多希 ――明治を生きた産婆――」  著 渡辺せつ子 まったく無名の人なんですが、それだけに興味深い話でした。 あまりに資料がないために、小説という形をとっていますが、実在の人の生き様を詳しく描いてくれているので、いわゆる偉人の話よりもある意味でこの時代の空気感のようなものがよく伝わってきます。 産婆という職業にスポットを当てていることにも惹かれますね。 確かに産婆は昔からある職業です。 経験 […]

「妾と愛人のフェミニズム 近・現代の一夫一婦の裏面史」 著 石島亜由美

「妾と愛人のフェミニズム 近・現代の一夫一婦の裏面史」  著 石島亜由美 妾や愛人の社会的イメージが明治、大正、昭和、平成と時代が変わる中でどう変遷していったのかを、新聞、雑誌、文学作品などを通して解き明かしていく作品です。 まず驚いたのは、明治の初期の話。 このとき、本の数年の間ですが、妾が法的に認められ、妻と同等の立ち位置にあった時期があったんですね。 皇室が男系継承であることへの整合性であっ […]

「利通暗殺 凶刃に斃れた日本リーダー”」 著 遠矢浩規

「利通暗殺 凶刃に斃れた日本リーダー”」  著 遠矢浩規 明治維新の立役者であり、維新後の明治政府を引っ張った大久保利通が暗殺された紀尾井町事件を克明に描いた本です。 もはや日本史に詳しい人にしか知らない事件で、歴史に埋もれてしまっていると言っても過言でないのですが、個人的には、大久保利通がここで亡くなったことは、その後の日本史にとっての分水嶺になったと考えているので、非常に興味深く読むことが出来 […]

「福地桜痴」 著 山田俊治

福地源一郎とも呼ばれ、幕末から明治にかけて活躍した人物ですが、なかなか一言で語るには難しい人物の話です。 幕末は外国方幕臣として通訳として活躍していました。 遣欧使節の一行に選ばれて活躍していますね。 維新後は、大蔵省に入ったこともありましたが、のちに東京日日新聞に入社してジャーナリストとして活躍します。 記者として西南戦争に赴き、最初に現地に行って戦争を報道をした人として有名ですね。 その後は記 […]