「チボー家の人々」
ロジェ・マルタン・デュ・ガール著
ロジェ・マルタン・デュ・ガールをノーベル文学賞に導いた作品ですね。今、読まれるべき文学だと思います。
物語は、裕福な実業家であり、厳格な父親の下で育ったアントワーヌとジャックという二人の兄弟を軸に進みます。
如才なく父との距離間を保ちつつも、医者としての地位を固めていく長男のアントワーヌと、繊細な感覚を持ちつつも、父に反発し、社会に反発することで自分を見つめていく次男のジャックの人生を通じで、世の中に生きる人の道とは何なのかを問う作品です。
この作品がなぜ今の世の中に必要かというと、二人の視点を通じて、第一次世界大戦に突き進む当時のフランス国民の感覚を見事に描き出しているからです。
これは、作者であるデュ・ガール自身がこの時代を経験したからにほかなりませんが、何故人々が煽られ、なぜ迷うことなく、戦争に突き進むのが当たり前かのように突き進むのかを追体験させてくれます。
格差が広がり、資本主義が行き詰っていく中で、隣国をはじめとして様々な国々との軋轢が今の日本に生まれています。
実際に感情的になり過ぎて、怒りの矛先を外国に向けるしかない人々も多いのかもしれません。
こんな時代だからこそ、日本人だけでなく、世界中の人に読んでもらいたい本ですね。
ただすこぶる長いのですが……。