「星夜航行」
著 飯島和一
よくぞ書いてくれたというか、書くのも編集するのも大変だったんだなと思われる作品です。
豊臣秀吉のいわゆる朝鮮出兵をベースに詳しくその時の話が語られているのですが、すごくためになります。
どうしても、豊臣秀吉と言うと、立身出世の話にばかり目がいってしまい、朝鮮出兵の話は割と歴史の授業なのでもスルーされがちなのですが、これすごい重要な話なんだなというのが読んでてよく分かりました。
何か、これについては本当に朝鮮の人が怒っても無理ないですね。
豊臣秀吉については、よく日本の偉人伝などで列せられていますが、決して偉人なのではなく、むしろ日本史史上でも稀にみる暴君であったのだということがすごくよくわかりますね。
時代の流れを政治的な方向からでなく、当時の交易などを中心に経済面でも追ってくれているので、その時代感が手に取るようにわかりました。
それにしても、知らなかったのですが、朝鮮出兵のために何万人もの百姓や漁民が足軽や人夫として駆り出された挙句、秀吉が死ぬと武士ばかりがとっとと日本に逃げ帰り、船が足りないために5万人ほどの百姓や漁民が朝鮮半島に取り残されてしまっていたのですね。
しかもその大半が、手柄を持ち帰りたい明の兵士によって殺されたというのですから、酷い話です。
20世紀に日本は懲りずにまた侵略戦争を起こしますが、何かこの辺の話を聞いていても何も変わっていなかったんだなと言うのがよく分かります。ていうか、そのへんのことをちゃんと掘り起こしてくれているので、売れる売れないにかかわらず、出版することに大きな意義がある本ですね、本当に。