「男が痴漢になる理由」
著 斉藤章佳
現代日本社会の歪んだ部分を見つめ直すために、とてもいい本だと思いました。通常、イメージしているような痴漢像と本物の痴漢には、大きな隔たりがあることがこの本を読めばとてもよくわかります。
普通、痴漢とは異常な性的欲求が強い人間のように思われがちですが、本当はどちらかと言えば、真面目なタイプが多く、ストレスを抱えている人間が多いんですね。なので性的欲求を満たすというよりも、自分よりも下の立場である女性を貶めることで、自分という存在を保とうとする。それが故に、痴漢を繰り返し、止められなくなるという話は、実際の痴漢の治療を当たっている先生が書いているだけあって、とても真実味があります。
痴漢が何のために痴漢をしているのか? と問われたときに、多くの痴漢が「生きがいのため」と答えているという話は衝撃を受けましたね。
ようするに、仕事ばっかりで、生きがいを持てない人が痴漢になりやすい。確かに、痴漢に、とまでは行かなくても、何らかの趣味とか生きがいがない人は、普段生活で持っている憂さを晴らす場所がないので、歪んだ状況に陥りやすいですね。
何か、趣味とか生きがいを持つということがいかに大事なのかというを思い知らされます。
この本では、痴漢の治療方法について、詳しく書かれているのでとても勉強になりました。
とにかく、刑務所に入れて罰を下すということも大事なのですが、それ以上に、痴漢を治療するということがどれだけ大事なのかがよく分かりますね。
男性優位の日本社会が待つ病巣が非常によく描かれていると思います。
こういう本こそ、学校の保険体育の授業とかで、使われればいいのにって、本当に思いますね。