「21Lessons」
著 ユヴァル・ノア・ハラリ
「サピエンス全史」や「ホモ・ゼウス」で一世を風靡したユヴァル・ノア・ハラリの最新作です。
ひと言で言うと、歴史学者らしく現代を歴史からの観点で非常によく捉えており、現代の現状を知るのは非常にわかりやすくためになる本でした。
著者が主張するように、アルゴリズムが人類を支配していくという考え方には個人的にも以前から考えていたことなので同意します。
そもそも脳神経科学が人間の意志が生化学的なアルゴリズムから生まれていることが解明されてきている今、政治や宗教の在り方が変わってくる、当然、テクノロジーがもたらすアルゴリズムがそれを助長していく、そうした未来像は確かにリアルに目の前にある話であるんですよね。
著者は本の中で丁寧に、現状の問題点を一つ一つのテーマに沿ってあげていき、今、この世界がどうなっているのか、そしてどこに向かっているのかを浮き彫りにしていきます。そして正直読み進めれば読み進める程、読者をどうにもならないじゃないかと絶望的な気持ちにさせていきます。
たぶん、そうした暗い話を見たくないという人もたくさんいるでしょう。
でも、暗くて、絶望的な話であるからこそ、著者はみんなで考えるべきだと敢えてこれらのテーマを語っているに違いありません。
何から何までアルゴリズムに支配されては、人間はなすすべはない。最後まで読み終えて、そうした話は何だかスピノザの「エチカ」で語らられる、運命は最初から決まっていて、人間の意志ではどうしょうもないという話と似ているなと思いました。
ではそうした未来を克服するためにはどうすればいいのか?
著者は、この本を出版することで、一人でも多くの人にそのことを考えてもらいたいと願っているのでしょう。