「図説 科学史入門」 著 橋本毅彦
科学の発達を当時使われた絵画や図像などを用いて歴史的に見ていくという本です。
文系の人で、理系のことを教養として広く学びたい人にとってはこれほどありがたい本はないですね。
難しい話もそれにアプローチした様々な人のナラティブによって語られるので、歴史的に何がどうわかっていったのかがわかりやすくてついつい引き込まれてしまいます。
一部の宗教や民族主義などに偏ることもなく、俯瞰的かつ体系的に編集されているので、誰にとってもアプローチがしやすく、親しみやすいです。
高校生くらいの若い子にも薦めたくなる本ですね。
この本の特徴は、やはりふんだんに使われている図像の数々です。
現代の理屈に沿って正しいものが載っているのではなく、あくまでその当時に考えられて描かれたことがそのまま載っているので、非常に興味深いです。
図を見れば見るほど、当時の人たちが無茶苦茶悩み、試行錯誤の上でそれを描いていることが伝わってきますし、それがわかるからこそ、何となく便利さを享受している今の生活がとんでもない努力と奇跡の上に築かれてきたものであることを思い知らされます。
またそれぞれの分野ごとに項目が分けられて本の構成自体がされていますが、実際それぞれの分野でやっていることは、かなり重なっており、他分野の話を広く素直に知った人ほど、新たな発見や発明に行き着いたのだということがよくわかります。
まあ、歴史から学べとい言葉がありますが、これって現代の話にもそのまま置き換えられる話なんですね。
これだけそれぞれの専門性が複雑している中では、一人の人間があれこれやるのは難しくなってきていますが、だからこそ、今の研究には専門を超えた科学者たちの交流と、それをどうまとめるのか、またそれらが成り立つ機会をどう作っていくのかということがいかに大事なのかということが結果的に良くわかりました。
実際、この本に載っている図像に関しても、独力でデータを集めて作成したものよりも、国などを超えて複数人で作成したものの方がずっと正確に描かれているんですよね。
自分たちがどんな世界で生きているのか、そしてどんな世界に向かおうとしているのか、淡々と教養を知ることが出来ながらも、そんなことを思わず考えてしまう非常に興味深い本でした。