「露軍によるウクライナ侵攻→米は信用出来ない→だから9条改憲と核配備を含めた軍事拡張を」という主張の危険性

ロシアによるウクライナ侵略が続き、ウクライナ軍も必死に頑張っていますが、なかなか解決の糸口が見えませんね。

さて、そうした最中で気になるのは、ロシアによる力づくの現状変更とNATOによる軍事的な不介入を受けて、日本国内における一部の言説として、「他国との同盟はあてにならない。今こそ憲法9条を改憲して、核配備を含めた軍備拡張をするべきだ」という意見が蔓延り始めているという点です。

確かにあらゆるケースを想定して話し合うことそのものは大切なことだと思いますが、個人的には現状において不安に煽られたあまり、こうした意見に迎合することは危険だと思います。
こうした意見はあまりに短絡で、話が飛躍し過ぎているのではないでしょうか。

第一にまず、ウクライナとアメリカの関係と、日本とアメリカの関係をほとんど同じものとして扱うことが前提にこれらの意見は主張されていますが、そもそも日本とウクライナとはアメリカとの関係において前提条件が違いすぎます。
ウクライナは、核放棄の条件としてアメリカに守ってるもらうことを約束してもらいましたが、アメリカの同盟国ではありません。
一方で日本とアメリカは基地を駐屯させている同盟国になります。
またアメリカにとって地政学的に日本は、アジア戦略の要です。
アメリカが日本を失うということは、そのままアメリカのアジア撤退を意味するので、そんな簡単に手放せる国ではないのです。
前提条件がまったく違うにも関わらず比べること自体がナンセンスなんですよね。

まあ、百歩譲って、今回の侵攻を教訓として中国の拡大に対して備えなければならないと考えたとしても、自国で守れるようにより軍備を拡張しなければならないという発想そのものが危険極まりないと思います。
そもそも日本一国で中国に太刀打ち出来るほどの軍備をもつとなったら、一体歳出のどれだけを軍備に費やさなければならいのか考えているのでしょうか(単純に年間の軍事費だけで5倍前後開きがある)。
単純にそうなると、まず福祉や教育、医療にかかる歳費が大幅に削れることになるので、今の日本でそれを本気でやるとしたら軍事国家になるしかありませんよ。

また軍事費が肥大化するということは、自衛隊の肥大化を意味し、そこに多くの利権が生まれて群がるので、軍を中心とした社会・経済となり、軍を拡張することによって利益を得る人たちが力を持つことになるでしょうから、どんどんと声の大きいタカ派の人たちが跋扈することになります。
ようするに、戦前の民衆に自由のない日本に立ち返るということです。
みんな、ホントに日本をそういう国にしたいと思っているのでしょうか。
ハッキリ言って、中国に攻められるよりも、身内のこうした人たちが台頭し、何かと不自由になる可能性の方が高いですよ。
実際に、日本はそうした歴史を一度歩んだわけですからね。

欧米諸国と違って、日本は民主主義を勝ちとったわけではないので、民主的な意識そのものは低いです。
家父長制が未だにいたるところでしぶとく生き延びているのがその証拠だと思います。
多くの人は、中国やロシアの独裁的な社会が怖く、彼らが攻めてくるの前に何とか民主主義を守りたいと考えていると思いますが、中国やロシアのやり方に対して、軍の拡張と言うやり方で応えてしまえば、中国やロシアに攻められる前に、日本はあれほど嫌っている、中国やロシアと同じ、独裁的な社会に自ら勝手になってしまう可能性が高いです。

ドイツと違って、そうした戦前の日本に回帰したいと願っている政治家や経済人が冷戦のおかげで公職復帰し、彼らの遺志を継ぐ人たちが未だに日本にはわんさかいますからね。
彼らがそんな好機を逃す訳ないですよ。

それと核配備についても、ロシアによるウクライナ侵攻以来話題にされることが多いですが、同じことが言えます。
まず日本の核配備をアメリカが許す訳がありません。
アメリカは核で持って、日本に対してアドバンテージがある訳ですから、日本が核武装してしまえばそれを失います。
つまり、アメリカが日本にいる意味がなくなるわけですし、それどころか、強気になってアメリカを追い出せと主張する人たちも間違いなく出てきます。
アメリカがそんな状況になるのを容認するわけがないですね。
つまり、核配備を選択するということは、日米同盟の終わりを意味するわけで、それどころかアメリカを敵に回す可能性があるわけです。

アメリカと提携しない限り、中国を抑え込むことは出来ませんが、そもそもその前提を失う可能性が出てきてしまうんですよね。

ロシアや中国に対して、ケンカ上等なやり方でやり合っても、それは彼らと同じやり方をとってしまうだけなので、彼らと何ら変わらなくなってしまいます。
今、世界はとにかく連携をして、ロシアを撤退させようとしています。
どこまでそれが通じるのかは分かりませんが、世界経済が打撃を受けるような措置すらもとって、どうにかしようとしています。
時間がかかっても、愚直にこうしたやり方で説得をし続けるしかないと思います。
自分たちの国だけがよければいいのではなく、連携こそが正義です。
軍拡の世界に引きずり込まれて、同じ穴の狢になってしまえば、それこそが国民にとって不幸の始まりになってしまいますよ。

yokosuka, japan – july 19 2020: Wide angle on the japanese Replenishment oiler ships JS Masyu AOE-425 and JS Tokiwa AOE-423 of japan maritime self-defense forces berthed in the Yokosuka naval port.