「ONCE ダブリンの街角で」
2007年/アイルランド
数ある恋愛映画の中でも、マイベスト3には入ってくる作品ですね。
いわゆる音楽映画のジャンルにでもあるのですが、劇中で流れる歌がことこどくいい。
この映画のサントラはグラミー賞にノミネートされたのですが、納得です。
わたしも初めてこの映画を観た後すぐにサントラを買いましたものね。
そしてこの映画は、どうしてもそこで歌われる歌に注目があつまりがちなんですが、実は話の内容そのものもシンプルなんですけれども、そこに普遍性があってとてもいいです。
失恋したストリートミュージシャンとチェコからの移民の女性が路上で出会うことから始まるのですが、この二人の関係の微妙さ加減が作品を通じて貫かれているのが、妙にリアルに見えて心を揺さぶられます。
大抵の恋愛映画の場合、くっついたり離れたりが頻繁に行われ、とかくその恋愛の成就そのものにテーマにしてしまうことが多いのですが、この作品はあえてそこを外しているんですよね。
つまり、主人公の男性と女性がくっつくかどうかに観ている人の興味を惹かせながらも、実は男性と女性がそれぞれ個々に抱えている問題に、二人が出会うことによって向き合い、自分にとって何をすることが大事なのかを知って、歩き始めることが本当のテーマだと観ていくうちにわかっていくんですよね。
何も難しい仕掛けをしなくても、訴えかけてくるものがあれば、たとえ低予算でも素晴らしい映画になる好例ですね。
個人的には音楽はさることながら、手持ちカメラを多用した演出も好きです。何度も観られるし、自信を持って人にも紹介出来る作品です。