「自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体」
著 石井 暁
今テレビドラマで話題になっている陸上自衛隊の「別班」の存在を追った唯一の本です。
ようするに総理大臣や防衛大臣でさえもその存在を知らされていない諜報組織があり、その組織が政府がまったくあずかり知らぬところで、身分を偽って中国やロシア、韓国などの海外で諜報活動をしているという話です。
それぞれの国に諜報活動をする組織があること自体は何ら珍しいことではないのですが、問題なのはあくまで自衛隊内で勝手にやっている話なので、別班の存在自体がシビリアンコントロールの中に自演隊がないことを意味してしまう点です。
シビリアンコントロールとは、軍隊の統率権を文官に持たせることを法律的に保証すること。
つまりシビリアンコントロールがない状態になってしまうと、その国の軍隊は自由に動けるようになってしまい、軍隊が自分たちの都合でクーデターを起こし、力によって国を掌握しやすくなってしまうのです。
わかりやすい例を言うと、軍隊が数年前に事実上のクーデターを起こして民主派勢力を力づくで排除し、国を支配しているミャンマーなどがそうですね。
また戦前戦中の日本もこの例に当てはまります。
統帥権干犯などと言って、軍隊がやりたい放題にやっていたわけですし、中国に展開していた関東軍などはもはや勝手に戦争を起こしていたわけですからね。
日本の場合、戦後こうした反省を踏まえて、民主主義国家として自衛隊に対するシビリアンコントロールしっかりやっていきていることを前提として、国民の今の生活があるのですが、それが出来なくなってしまうということは、軍人が威張り腐っていた戦前の逆戻りしてしまう可能性が多分に出て来てしまうということです。
なかなか想像がつかず、そんな簡単に変わらないよと思うかもしれませんが、社会は変わるときには変わってしまうんですよね。
だからこそ、シビリアンコントロールを壊す芽があること自体が問題なんです。
極端な話、中国が攻めてきて日本を占領するよりも、シビリアンコントロールから外れた自衛隊がクーデターを起こし、軍部がイニシアチブを握る方が可能性は高いと思います。
この話、実はこれからの日本を考える上でもこの上なく大事な話なんですよね。
それにしても、本書の著者である記者は、命の危険も顧みずよく調べたと思います。
こういう記者を見ると、日本のジャーナリズムもまだまだ捨てたもんじゃないと思いますね。