「世界で一番透きとおった物語」 著 杉井光

「世界で一番透きとおった物語」 
著 杉井光

わあ、いい意味で何て狂気を感じる物語なんだろうって思いました。
わたし自身が病院に勤めているだけあって、正直、霧子さんと同じところである程度のことは気づいたんです。
でも、まさかそのあとにあれほどまでに予想外のオチがあるとは思いませんでした。
ミステリーにはこういうやり方もあるんだと打ちのめされました。

いやあ、尖がってますね。
間違いなく他の誰もが思いつかないことに思いついたその想像力には敬服します。
これを書くのはかなり大変だったと思いますしね。

しかもすごいのが、ここまで形式にこだわりながらも物語をしっかりと作っている点。
物語としてもちゃんと面白い。
ただあまりにもオチのインパクトが強すぎたため、そのオチに気が付いた時に、心情を辿っていた情感が大方ふっとんでしまいました。
気持ちが驚きの方にいっちゃって、物語そのものにそれ以上感情移入していくことが難しくなってしまったんですよね。
冷静に考えると、やっぱりこの父親は酷いとか。
母親の気持ちをもうちょっと描いてほしかったとか。
色々とあったんですけれど、何か全部ひっくるめてまとめられてしまった感はありました。
まあ、このオチのために描かれたと言っても過言ではない小説なので、しょうがないといえばしょうがないですけれどね。

単純に、もう二度と誰も真似が出来ないモノを作ったという点で、すごい作品だと思います。