「商人の世界史 小さなビジネス革命が世界を変えた」
著 玉木俊明
歴史を商人の動きという点でとらえた話です。
こういう視点で観ると、確かに世界の歴史が全然違ったものとして見えてきます。
扱っているのは、古代メソポタミア商人から、フェニキア人、パルティアの商人、イスラームの商人、ソクド商人、イタリア商人、セファルディム、アルメニア商人、ヴァイキング、ハンザ商人などの大航海時代前の話から、オランダ、ポルトガル、スペイン、イギリスなどが覇権国家になっていくまで。
日本の話もちょっと入っていますね。
この本を読んだ全体としての印象は、まず世界史といえば、どうしてもヨーロッパの歴史をベースに考えてしまいがちなのですが、こうして世界全体を商人の視点で見て観ると、ヨーロッパが主役であった時代はたかが500年ほど前からで、それまでは中国の方が豊かであったり、イスラーム商人などが中間商人として幅を利かせていたりと、全然違った形で見えてくるんですよね。
もちろん、世界史的にフェニキア人が重要であったり、イスラム商人が力を持っていたと、そういったことは知っていたのですが、改めてそれぞれを細かく見てみると、全然知らなかったことばかりだったので、非常に勉強になりました。
そして、もちろん大航海以降のヨーロッパの話も面白かったです。
17世紀にオランダが覇権を握った理由として、ポーランドの穀倉地帯からバルト海を通って穀倉をアムステルダムに集めたからといった話とか全然知りませんでしたよ。
個人的に興味があったのはイギリスの話。
船を使った中間商人として、ヨーロッパの経済的な覇権を握っていたオランダを見ていたイギリスが、自分たちも開運に力を入れることで力を持ち始めたという話ですね。
もちろん、そうした歴史の流れは知っていましたが、面白かったのが、イギリスがオランダを出し抜く方法として思いついたのが航海法という法律だったということ。
これは名誉革命で有名なクロムウェルが定めた法律なんですが、ようするに輸入をする際にはイギリス船か貿易の相手国の船でなくてはいけないというルールです。
これをすることによって、中間商人であったオランダから、イギリスはいとも簡単に覇権を奪っていったんですね。
そして産業革命時に、電信を開発し、その電信の誕生こそが大英帝国の礎を築いたという話も面白かったです。
つまりイギリスはこのときから製造業を中心とするのではなく、情報を自分たちに集め、手数料でぼろ儲けする、金融業を中心として国を豊かにさせていくことを選んでいるんですね。
それまでモノの移動はヒトの動きとイコールだったものが、電信の誕生で情報が先に行き交うようになり、その商機をイギリスは逃がさなかったんですね。
このときのアドバンテージが今も続き、ケイマン諸島などのイギリス国王の直轄地がタックスヘイブンとして使われているという話には色々と考えさせれるものがありました。
このほかにも中間商人としての日本の商社の話、それらが製造業の足するとをするのではなく、自ら投資を中心とした事業形態に変えつつなる話など、今知っておくべき話なども数多く書いてあり、読んでみて非常に勉強なりました。
歴史が好きな人だけじゃなく、ビジネスマンにも役立つ本ですね。