西南戦争に従軍した本営大砲隊・久米清太郎の七カ月にも及ぶ従軍日記をもとに描かれた作品です。
注目するべきは、清太郎が兵士として従軍していたのではなく、病院掛として従軍していた点です。
なので、兵士が見た戦争とはまた違う視点で当時の戦争がリアルに描かれています。
医者の心得がある人間などほとんどおらず、また薬品等もまったく十分でない戦場での看護は文字通り地獄絵図ですね。
またあまりの負傷兵の多さに、病院掛の人員不足も手伝って、清太郎が死に物狂いで毎日を過ごしているのが日記から滲み出ています。
実際、清太郎も体を途中で壊していますしね。
本書が特徴的なのは、清太郎の日記を子孫である著者が小説によって補足しているという点です。
これは珍しい形ですね。
少なくともわたしが知る限りこのような手法を取っている作品は始めて読みました。
確かに清太郎の日記は、明治初期の人が書いただけあって、現代人のわたしたちには読みづらいのと、あと彼が忙しすぎたためか文章が短いものが多く、説明が多分に不足しています。
それに対して、著者が小説をもってそのときの様子を臨場感あふれる文体で描いてくれるのは、読み手としてはわかりやすく、面白かったです。
これも一つのやり方だと思いました。
また清太郎は西南戦争を生き抜いたので、この本ではその後の彼がどう生きて行ったのかも語られていました。
西南戦争が終わったところで日記は終わっているので、そこまでにしてもいいところを後日談をしっかりと描いてくれていたのでとても興味深かったです。