「岩倉使節団の群像
日本近代のパイオニア」 編 米欧亜回覧の会/泉三郎
岩倉使節団の概要やメンバーの紹介を知ることだけでなく、使節団の歴史的意義を考えさせてくれる本です。
確かに近代の起点としてこの使節団を考えた時、その歴史的意義の重要さがわかってきますね。
この明治の初期というときに、政府をまさに動かしている者だけでなく、これから動かそうとしている者たちの多くが実際に欧米の良いところだけでなく、悪いところも含めて真摯に受け止め、学んできたということは非常に大きいです。
実際に、行く前は大久保や木戸は征韓論に対しては肯定していたのに、戻ってきたら内治優先を口にして意見を翻すようになっていたのですからね。
日露戦争以後の暴走する軍部やそれを止められない政府の責任の元を岩倉使節団に求める声もありますが、それが見当違いな話だというのはこの本を読めばよく分かります。
このときは、このときにやれることを必死にやっていたのであり、確かに憲法がプロイセンに近い形で作られていく切っ掛けにはなったかもしれませんが、あくまで悪いのは、日露戦争後に調子に乗って尊大になり外国から何も学ばなくなったその態度にこそあるわけですからね。
実際に使節団では殖産興業だけでなく、社会福祉や憲法なども深く学んでいるわけですしね。
自分の足らないことや、出来ていないことをいかに受け止めて、それを克服するためにお偉いさんになろうといかに真摯に耳を傾けることが大事なのかということが非常によくわかりました。
また使節団の話といえば、大抵は大使や副使、それに津田梅子ら女子留学生に焦点が当てられがちなところを、この本では地味だけど非常に重要な人々を詳しく紹介してくれていたので、読み物として非常に興味深く読むことが出来ました。