「成瀬は信じた道をいく」 著 宮島未奈

「成瀬は信じた道をいく」 

著 宮島未奈

成瀬シリーズの第二弾ですね。

期待を裏切ることなく大学生の成瀬も成瀬ぶりをブレることなく発揮していて大いに楽しんで読むことが出来ました。

この物語が特徴的であるのは、基本的に主人公であり、猛烈なキャラクターである成瀬の主観で描かれるのではなく、成瀬と遭遇することによって気持ちを揺さぶられた人たちの視点で描かれているという点です。 

面白いのは、明らかに変わったキャラクターである成瀬と接することで、それぞれのエピソードで語り部となっている登場人物たちが実は自分たちにも変わった部分があり、成瀬を見習ってそれを認めていくことで素直になり、生き方が楽になっていくというところ。

つまりそここそがこのシリーズのテーマであると思うんですけれど、周りに合わせて普通を装って生きるより、例え変だと思われても、自分の気持ちに素直に従って生きたほうがずっと自分らしく生きることが出来るし、何よりも楽しく生きられるということなんですよね。」

大抵の人は他人の目が気になってしまい、なかなかそうしたくても踏み切れないのですが、でもそもそも他人の目よりも自分の信条のほうが大事である成瀬は、いとも簡単に自分が自分であり続けることを実践している。

多くの人は最初はそんな成瀬を変に思い、疎ましくすら思うのですが、登場人物たちは成瀬と接していくうちに普通が何なのかわからなくなっていき、ひたすら自分の気持ちに従って生きる成瀬を羨ましく思っていることに気がついていくというわけなんですね。

何だかこの登場人物たちの気持ちはよくわかりますね。現実世界に成瀬ほと突き進む人はなかなかいませんが、わたしたちは皆成瀬的な人間を見ることで背中を押されたいのかもしれません。

読み進めていくうちにそんな気持ちになるからこそ、この本はすこぶる面白く、登場人物だけでなく、わたしたちも成瀬のことが大好きになるんだなと思いました。

ああ、このシリーズ、出来ればずっと読みたいですね。大人として働く成瀬や母親となった成瀬、はたまたおばあちゃんなった成瀬…ぜひ見てみたいですね。