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厳選名著紹介

「推し、燃ゆ」 著 宇佐見りん

「推し、燃ゆ」 著 宇佐見りん タイトルや本の装丁を見て勝手に抱いていた印象と読んだ後の読後感がだいぶ違う作品だなと思いました。 論評などには、内容のぶっとんだ感じを評価している声が結構多くあったので、てっきりイメージ的には本谷有希子さんのような感じの文体の人かなと思っていたのですが、読んでみたら、今の若者の等身大の生きづらさが描かれているんだなと感じました。 一見、表題だけ見ると変わった性格の子 […]

「ブルドゥー『ディスタンクシオン』講義」 著 石井 洋二郎

「ブルドゥー『ディスタンクシオン』講義」  著 石井 洋二郎 フランスの社会学者のブルデューの著書として有名な「ディスタンクシオン」の解説本ですね。 ディスタンクシオンを理解する上で、肝となる概念がハビトゥスです。 ハビトゥスとは人々の日常経験において蓄積されていくが、個人にそれと自覚されない知覚・思考・行為を生み出す性向のことをいいます。 つまり、生まれ育った環境の中で、自らが意識することなく自 […]

「正欲」 著 朝井リョウ

「正欲」  著 朝井リョウ なんとも言えない気持ちにさせられた小説でした。 読後感に一般的に求められるような都合の良いカタルシスがない反面で、色々と考えさせられる話であることは確かなので、非常に優れた小説なんだと思います。 それにしても、まずはこのテーマをあえて選び、書き切った作者に敬意を表したいですね。 「多様性」という言葉からもこぼれ落ちる性欲をテーマにしている時点で一般受けしないことはわかり […]

「絶唱」 著 湊かなえ

「絶唱」  著 湊かなえ 湊かなえさんの阪神淡路大震災の記憶を軸に描かれた作品ですが、それまでの作品と印象がかなり違うのでかなり驚きました。 四本立てで最後の章がおそらく作者の実体験に基づいた私小説に近いものかと思われますが、その経験で感じたことが動機づけとなり、見事に一つの作品として仕立て上げているのですね。 震災での経験があったからこそ、この人は作家になったのかなと、この作家さんの原点を描いて […]

「ニムロッド」 著 上田岳弘

「ニムロッド」 著 上田岳弘 芥川賞受賞作ですね。 サーバーをメンテナンスする仕事をしながら、ビットコインを掘る仕事をするように社長に命じられたぼく(中本哲史)を主人公にした話です。 書評を見てもいい意味で芥川賞受賞らしく、称賛する声となんだかよくわからないという声に二分されています。 まあ、確かに物語に人の情感によるカタルシスを求める人には、この作品は取っつき悪いものとして映るでしょうね。 これ […]

「その名を暴け ♯Me Tooに火をつけたジャーナリストたちの闘い」 著 ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー

「その名を暴け ♯Me Tooに火をつけたジャーナリストたちの闘い」  著 ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー 映画界の大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインによる数々の性的暴行を暴いていったニューヨークタイムズの記者たちのドキュメンタリーですね。 ニューヨークタイムズのこの一連の話が世界中で♯Me too運動が生まれるキッカケを作ったのは記憶に新しいですね。 タイムズはこれでピ […]

「文化人類学の思考法」 編 松村圭一郎、中川理、石井美保

「文化人類学の思考法」 編 松村圭一郎、中川理、石井美保 文化人類学という学問を知っているでしょうか? たぶん多くの人にとっては、どこかで聞いたことがあるかもしれないけど、具体的に説明するのはちょっと難しいと感じる学問でしょう。 その名の通り、文化人類学とは、人類の文化の在り方を学ぶ学問です。 これが深く知っていけばいくほど面白いのですが、特徴的なのはその独特の思考法と言えると思います。 この本は […]

「囚われし者たちの国 政界の刑務所に正義を訪ねて」 著 バズ・ドライシンガー

「囚われし者たちの国 政界の刑務所に正義を訪ねて」  著 バズ・ドライシンガー これはすごいルポタージュでした。刑務所から大学へのパイプラインというプログラムをアメリカで立ち上げた大学教授の著書なのですが、刑務所で教えるうちに、刑務所の在り方、司法の在り方を大きな視点で問い直したいという動機で世界中の刑務所を訪ねた歩いた記録です。 わたしたちの社会には、当たり前のように刑務所があり、悪いことをした […]

〈家父長制〉は無敵じゃない 日常からさぐるフェミニストの国際政治 著 シンシア・エンロー

〈家父長制〉は無敵じゃない 日常からさぐるフェミニストの国際政治 著 シンシア・エンロー 社会の様々な場面で支配の顔を覗かせる家父長制に対して、フェミニストたちがいかに戦ってきたのかを記した本です。 男性の中には、フェミニスト=男性を攻撃する人と認識している人も多いと思いますが、この本を読むとわかりますが、フェミニストは男性そのものを攻撃しているわけではなく、家父長制がおかしいと主張しているんです […]

「人新世の「資本論」」 著 斎藤幸平

「人新世の「資本論」」 著 斎藤幸平 言いたいことはとてもわかる本でした。 確かに気候変動問題は待ったなしで、そのためにはドラスティックに資本主義を変えて行かなきゃいけないこともわかります。 理想という意味では、この人の考え方は正しいと思います。 ただあまりに話がラディカル過ぎて、本当にそれで皆が納得してすんなりといくのかっていうことを考えると、どうしてもそれをそのまま受け取れない自分が心のどこか […]