CSRという言葉を知った上で、多くの人がまず疑問としてぶち当たるのが、コンプライアンス・ガバナンスとの違いではないでしょうか?
コンプライアンスやガバナンスといった言葉はたいぶ前からCSRに先駆けて使われ、今ではもう大きな企業であれば大抵コンプライアンスはちゃんと規定されていますし、ガバナンスもコーポレート・ガバナンスとして、すでにビジネスの世界では浸透した言葉になっております。
ただこれらの言葉は、経営陣や関連部署では日常的なものとなっていても、まだまだそれ以外の一般的な社員にとっては、「聞いたことがあり、何となくは分かるけれど、しっかり説明は出来ない」といった立ち位置にいるのではないでしょうか。
なので、まずはこの二つの言葉をしっかりと説明することから始めたいと思います。
最初にコンプライアンスですが、日本では単に“法令遵守”と訳され、法律を守ればいいとも思われがちですが、元々の意味は「関係者の願いを受け入れること・関係者の要請などに対応すること」です。もはや法律を守ることは当たり前の話で、社内規則や業務マニュアルなどを法令に遵守した内容にした上で適切に運用し、社会の良識や常識に対して配慮し、かつ対応することが求められています。
よく社内でコンプライアンスを守るようにしつこく言われることもあるかと思いますが、これはコンプライアンス違反を犯し、これが周知されると、経営悪化に直接つながるからです。コンプライアンスを守るということは、倫理を守ることで会社や社員の生活を守ることであり、また会社によるパワハラ・セクハラ・過労死などの職場環境の悪化から社員を守るガイドラインでもあります。
一方でガバナンスという言葉は、“統治”という意味で、コーポレートガバナンスで“企業統治”という意味になります。分かりやすく言うと、企業とどのように経営(統治)していうのかを経営的・倫理的な観点から管理していくという仕組みといったところでしょうか。この言葉は、日本ではもともとバブル崩壊や企業の不祥事などを受けて、経営陣に対するチェック機能を株主などが監視するという目的で言われるようになった言葉です。なので、「もっと株主に目を向けた経営を」というのが元々の意味合いとして強いのですが、ただ単に企業に利益を上げさればいいというわけではありません。倫理的な側面もちゃんとしなければ、結局は経営は悪化するということが明らかになった今では、企業活動に対して、透明性や公平性を確保し、情報公開や説明責任などを果たすシステムを備えることが求められています。
さて、話を戻しましょう。このコンプライアンス・ガバナンスという言葉が、CSRとどう違うのかという話なのですが、簡単に言うと、この二つは、「CSRを企業内で適切に行うために、企業がそもそも備えているべき必須の要素」とでもいったところでしょうか。
つまりコンプラアンスは、CSRを行う上で、企業がそもそも備えているべき憲法のようなルールであり、ガバナンスは、そのルールが守られているのかをチャックする仕組みといった位置関係であるといえますね。
コンプライアンス・ガバナンスは、CSRの取り組み項目の一つでありますが、そもそもCSRを積極的に行っていなくても、この二つは企業として最低限行っているべき義務であるといえます。