国連グローバルコンパクト CSRに関する規格や指針②

 国連が提唱したイニシアチブとして、CSRに最も関するものと言えば、国連グローバルコンパクトが挙げられます。(コンパクトには、協定の意味があります。)
 これは世界的にグローバリゼーションの負の側面が目立ち始め、過激なアンチグローバリゼーションの動きが出てきたことと、人類的課題を解決するには国家だけでは無理で、社会のあらゆる事象にほとんど関係する企業に、大きな役割を期待せざるを得なくなったという認識が広まったことを踏まえて、1999年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で、コフィ―・アナン国連事務総長(当時)によって提唱されたイニシアチブです。
 その目的として、各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに自発的に参加することが期待されています。(グローバル・コンパクト・ネットワークジャパンのホームページから)

 もう少し具体的に、かつ簡潔にいえば、

 ・世界中の営利活動に10原則を組み入れる
 ・国際連合の目標を支持する行動に対して触媒の役目をする

 と、この二つを目指しているイニシアチブですね。

 では、実際にこのイニシアチブが遵守し実践することを要請している4分野での10の原則を見てみましょう。

 [人権] 
原則1:
企業は、国際的に宣言されている人権の保護を支持、尊重すべきである。
原則2:
企業は、自らが人権侵害に加担しないよう確保すべきである。
[労働] 原則3:
企業は、組合結成の自由と団体交渉の権利の実効的な承認を支持すべきである。
原則4:
企業は、あらゆる形態の強制労働の撤廃を支持すべきである。
原則5:
企業は、児童労働の実効的な廃止を支持すべきである。
原則6:
企業は、雇用と職業における差別の撤廃を支持すべきである。
 [環境]  
原則7:
企業は、環境上の課題に対する予防原則的アプローチを支持すべきである。
原則8:
企業は、環境に関するより大きな責任を率先して引き受けるべきである。
原則9:
企業は、環境に優しい技術の開発と普及を奨励すべきである。
 [腐敗防止] 原則10:
企業は、強要と贈収賄を含むあらうる形態の腐敗の防止に取り込むべきである。

 提唱された時点ですでに世界的に共通する指導原理が確立しており、それを確認するためのものですが、端的に問題点をきっちりと網羅したイニシアチブだといえるでしょう。確かに、世界中のすべての企業がこれらの規範を遵守し、実践してくれれば世界は大きく変わりますね。 
 ちなみに2015年現在で、世界でこの原則に署名している団体は1万2000団体強で、そのうち企業は8000社強です。日本では2017年現在で257の団体が署名しています。
 
 署名企業は、国連の様々な政策への支援が期待されています。署名企業が課せられている義務は、CoP(Communicatoion on Progress)という、10原則に関する取り組み状況についての報告書の年一回の提出。CSR報告書を作成している企業は、それがCoPとなります。

 国連グローバルコンパクトは、国連が初めて、各国政府にではなく、直接企業に対して提唱を行ったイニシアチブです。法的に拘束力のある行動規範ではありませんが、このイニシアチブを推進するために、国連事務総長室の傘下にある組織のひとつとして運営されています。
 
 国際機関である国連が、政府、企業、アカデミア、NGO,個人など、様々なステークホルダーとネットワークを築いて協働を行う。一方で企業をはじめとするこうしたステークホルダーも、これに呼応することで、より活発に、またより明確な形で社会の持続可能な発展に貢献していることを示すことが出来ますね。