https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20190209-00114248/
ベーシックインカムとは、要するに月々まとまったお金を政府が与える代わりに、社会保障のサービスもなくすという制度です。
もう何十年も前から議論に出ては消え、最近またチラホラと聞かれる政策で、日本でも維新の会とかが推し進めている話なので聞いたことがある人も多いかもしれませんね。
今回、フィンランドが二年に限ってこのベーシックインカムの実験を行い、先ごろ一年目の結果の分析が出たことがニュースになりました。
結果を言うよりも、まず先にどういう条件で、誰を対象に実験を行ったかというと、2000人の失業者を対象に、従来の基礎失業給付や労働市場補助金を停止する代わりに月額560ユーロ(約7万円)のベーシックインカムを支給したそうです。
そして結果は、参加者の就労状況はそれほど改善されなかったものの、自分で感じる健康状態やストレス度は他のグループよりも良かったというものになったそうですね。
個人的な感想を言えば、いわゆる幸福度的なものが、ベーシックインカムを施行した方がいくぶん高くなることがわかったということは価値のある実験結果だと思いますが、ただそもそもこの条件設定でベーシックインカムの実験を行ったところであまり意味がないようにも思いました。
基本的にベーシックインカムとは、最終的にはすべての国民を対象とするものだと思うので、まず対象を失業者という特殊な環境に置かれている人々に限定してしまっていることに疑問は感じます。単純にそれでは日本でいう失業保険とかとあまり変わらなくなってしまい、結局はどちらの方がどれだけの期間でいくら貰えるかというだけの話になってしまいますからね。
それに、この政策で肝となるのは、どれだけの金額を次々国民に払うのが妥当なのか、またその代わりにどこまでの社会保障政策を止めるべきなのか、その線引きの部分にあると思うんです。
つまり、例えば月に国民一人当たり30万もらえる代わりにすべての社会保障政策を止めてしまうのと、7万しかもらえないのに、すべての社会保障政策を止めてしまうのでは全然話が違ってきてしまうということです。
国の支出を少しでも減らしたいと考える政党は、そりゃちょっとのお金をあげることで、面倒な社会保障政策を全部止められるのなら喜んでこの政策を推し進めるだろうし、また社会主義を打ち出すような政党がこの政策を推し進めるのならば、多くのお金を与える一方で、ある程度の社会保障政策を残せというでしょう。
ようするに、どこで条件の線引きをするかによって、まったく政策の見え方が変わってきてしまう政策なんですよね、そもそも。
まあ、それだけで生活が出来る程の金額を国民一人一人に与えるのは、ちょっと国家予算的に厳しいと思うので、月額の金額に関しては、この実験で行われた通り7万くらいの金額が限度かなと思います。そうすると、どれだけの社会保障を残せばいいのかという話と、どれくらいの人がこの政策を施行することによって仕事をしなくなるのか、という話になってくると思いますが、さすがに国を挙げて大々的にその実験をする勇気のある国はあまりなさそうですね。フィンランドでも結局、今回の実験の延長はしないようですし。
ちなみにスイスでは、2016年に国民投票でベーシックインカムの導入を賛否を問いましたが、圧倒的な反対多数だったそうです。ただチューリッヒ州のライナウ村というところで、月額27万5千円を支給するというベーシックインカムの実験が2019年1月から一年間行われるみたいなので、こっちの結果はどうなるのか気になりますね。