スチュワードシップ・コードは、元々は英国で生まれたものです。スチュワード(steward)とは執事、財産管理人の意味を持つ英語となります。
スチュワードシップコードは、金融機関による投資先企業の経営監視などコーポレート・ガバナンス(企業統治)への取り組みが不十分であったことが、リーマン・ショックによる金融危機を深刻化させたとの反省に立ち、2010年に金融機関を中心とした機関投資家のあるべき姿のガイダンスとして規定されました。
日本では2014年に、投資家と対話を通じて企業の持続的成長を促すことを目的として、「責任ある投資家」の諸原則、いわゆる日本版スチュワードシップ・コードが策定されています。
この日本版スチュワードシップ・コードでは、企業の持続的成長を促すとともに、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るために以下の原則が設けられました。
1.明確な行動指針をつくり、公表する
2.親会社や取引先などとの利益相反を回避するため、議決権行使を監督する第三者委員会設置など明確な方針をつくり、公表する
3.投資先企業の状況を的確に把握しチェックする
4.機関投資家は、中長期視点で投資先企業と「目的を持った対話」を通じて、投資先企業との認識を共有し、問題の改善に努める
5.議決権行使の方針をつくり、個別の投資先企業および議案ごとに賛否を公表する
6.機関投資家としての責務をどう果たしているか、顧客・受益者に対し、少なくとも年に一度は報告する
7.投資先企業の持続的成長に役立つように、対話や行動を適切に行うための実力を備える
投資をやらない人にとっては、投資とは単にお金を儲けるものという認識があるかもしれません。でも、投資家は単にお金を儲ければいいというわけではなく、投資先の企業が持続的な成長をするためにするべきことをやっているかをちゃんと監視しなければいけません。
「責任ある投資家」の諸原則(日本版スチュワードシップ・コード)は、法的拘束力のないソフトローであるとはいえ、投資家にも従うべきこうしたルールがあるということを明文化したものだといえます。
昨今では、投資は短期的なキャピタル・ゲイン狙いのものに偏っており、とにかく多くのお金を儲けたいと考えている人や投資をお金儲けの手段としか考えていない人が増えています。
ただ投資とは本来、投資先企業が持続的に成長するためのものであり、企業が持続的に成長するためには、社会的な責任を果たすことが必須です。
企業の先に社会があり、そもそも社会が持続しない限りは何も成り立たない。個人投資家を含めたすべての投資家には、まず最初にそのことを考えて、社会の明るい未来を想像してもらえれば、と思います。