「団地と移民」 著 安田浩一

「団地と移民」
著 安田浩一

一気に読んでしまいました。とても面白かったです。
団地という存在は、個人的にずっと気になっていたんですよね。確かに、わたしの子どもの頃は、まさに「団地ともお」の世界で、わたしは団地には住んでいませんでしたが、団地に住んでいる友達はたくさんいて、彼らのうちに何度となく遊びに行っていました。
あの頃の団地は、ファミリー層ばかりで、そこら中で子どもが遊び回っていました。

しかしいつしか大人になり、社会にもまれている中で、あの騒々しかった団地が日本中で高齢化を迎え、老人と外国人しかほとんどいなくなっていることを知りました。
少子高齢化を迎えた現在、郊外を中心に建てられた団地のほどんどが若者の惹きつけないのは自明の理で、今では、むしろなぜそのことに気づかずに、ここまで団地を造り続けてしまったのかと疑問に思うほどです。

ただこの本のいいところは、団地に元気がないと嘆くだけではなく、各地で生まれている、どうにかしようという動きをちゃんとルポしている点です。
蕨市の芝園団地における若者たちの頑張りや、そのほか当事者である外国人や老人の中でも少しでも状況を良くしようともがいている人がたくさんいて、諦めたり、嘆いたりする人ばかりじゃなく、頑張っている人もいるんだ知って、何だか妙に元気づけられてしまいました。

団地は未来の日本の縮図です。老人ばかりになり、そこに外国人が入ってきて、お互い無関心になる、ひどい場合は対立してしまう。今後は、団地だけじゃなく、日本中でそうした光景が当たり前となってくるかもしれません。
この本でも、そうした例としてフランスの団地事情をルポしていますが、他人ごとでない未来は待っているのです。

問題は、いかに共生できるか。
年齢や肌の色に関係なく、どうすれば壁を越えて、共に生きて行けるか。それは一人一人が考えて行かなきゃいけないことなんですが、自分には関係なく、それは考えなきゃいけないことなんだと、強く考えさせてくれる良心の叫びが聞こえてくるような本でした。