NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争1941第1回開戦」を観て考えたこと。

二夜連続で放送されたNHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争1941第1回開戦」を観ました。
その時代に生きた様々な人が遺した日記や手紙をAI解析によってエゴリサーチすることで、民衆の心情がどうやって戦争に向けて変わっていったのかという話を複眼的に迫る番組でしたが、非常に興味深かったです。
日米開戦の一年くらい前までは徐々に物資は減ってきているものの、割と普通の暮らしをしており、アメリカ文化などにもなじんでいたんですよね。
しかも政府批判すらもしてる。
でも、ドイツ・イタリアとの三国同盟の締結を機にアメリカが日本に対して経済制裁を課し、一気に国民生活に支障が出るようになってから様相が変わってくるんですよね。
皆、国際世論の見通しが甘く、制裁のキッカケを作った政府を批判するのではなく、米英を叩くようになるんです。
わかりやすくナショナリズムが台頭してくるんですよね。
このナショナリズムというやつが酷く厄介で集団心理によって個人の気持ちも簡単に変えていくんです。

わたしも2年程前に、韓国との徴用工の問題が表面化したときに、世の中があっという間に反韓感情に湧きあがった時に、ナショナリズムの気持ち悪さを感じました。
感情だけが一人歩きして世論を形成して行ってしまうわけてますね。そして最悪の場合、この1941年のときのように取り返しのつかない道に突き進んでしまう。

番組を観て意外だったのは、ナショナリズムが湧き上がるまでは意外とみんな冷静に社会を見ているんですよね。多くの人がアメリカに戦争を仕掛けても負けるということは想像出来ていたし、そもそも資源のない国には、勝ち目すらないということも。

でも結局日中戦争に命もお金も投資し続けてきたことがネックになった。中国から退けと米英から言われたときに、それまでのことを無駄には出来ないという思いが米英への反発となり、それが経済封鎖によって抑えられなくなったのです。自国の世論への配慮から第二次世界大戦への参戦機会を伺っていたアメリカからすれば、当然わざと日本を焚きつけたところはあるでしょう。問題はそうしたアメリカ側の意図を読めずに、常に都合よく楽観的に後手後手に回っていた政府や軍部であり、そして彼らを批判するのではなく、彼らに煽られるがまま米英にだけ敵意を向けていった国民にあります。

何かこうして話していると、昔の話なのか今の話なのか分からなくなりますね。実際この時の日本と同じような状況に陥っている国は今現在世界にはたくさんあるでしょうし、また日本の現在を考えても、何だかんだ言いながらも「中国」「韓国」という言葉に過敏に反応している人もたくさんいますしね。
まあ、これは相手の国も同じで、それをわかっていながらも自分たちの方こそが正しいのだと思い込んでしまうところがナショナリズムという病の厄介なところなんですが。

それにしても今回の番組の作り方は非常に興味深く新たな視点で戦争を改めて考えることが出来ました。ビッグデータの正しい使い方をしたと思います。