闇営業問題、社長の会見によって、何だか収拾がつかなくなっていきそうですね。
何でこうなってしまったのか、これからどうすればいいのか。
自分の頭を整理すべくちょっと個人的に吉本再建案などを勝手に考えてしました。まったくもって誰にも求められていないんですけれどもね。
まずこれからの吉本を再建するに当たって、キーワードは芸人ファーストです。ただここで問題なのは、そもそも芸人という定義そのものが曖昧で、そのことが実は問題を分かりにくくさせているような気がするんですよね。
ようするに芸人という職業があまりに特殊過ぎるので、彼らの雇用形態を一般論で論じていいのか、どうかという話がどうしても出てきてしまうのです。
ここが曖昧だからこそ、何となく吉本と芸人とそして一般の世間との乖離があり、溝が埋められない状態が続いていると思うんですよね。
なので、まず芸人とは何ぞやという話から始めた方がよさそうです。
お笑い芸人とは何ぞやと考えるときに、さきの宮迫さんと田村さんが会見した際に、ビートたけしさんが発した言葉が手掛かりになると思います。大まかに言えば、「芸人なんてそもそも品行方正な生き方が嫌でお笑いしか出来ないから、芸人になっているのに、そういう人間に品行方正を求められすぎても困る」という発言です。
そうですね、たけしさんの時代のお笑い芸人を考えると、確かにお笑いしか出来ない人間が、ある意味ヤクザな商売であるお笑いをやっており、それゆえに浮気をするのも、宵越しのお金を持たないのも、芸人たればこそみたいな風潮はあったと思います。
未だにそうした空気みたいなものがあるのも確かでしょうし、吉本という会社も、芸人とはそういうものだという認識があるからこそ、ある意味そうした認識を利用しているのかもしれませんが、若い時はギャラが出ないことに文句を言うな、芸人とはそういもんだから、という話になっているんじゃないかと思います。
ただこの空気は芸人の世界では未だに温存されているとしても、世間一般的な見方そのものは変わってきているように思われます。
潮目は吉本がNSCという芸人養成学校を作ったことです。ようするに、社会からあぶれ、お笑いしか出来ない人間がお笑い芸人になるという図式から、お笑い芸人を大量に養成し、生産していくようになったのです。
そして奇しくもそのNSCの一期生にいたのがダウンタウンです。ダウンタウンが爆発的に売れたために、皆、彼らに憧れ、芸人になる人がどんどんと増えていきました。お笑い芸人は、それしか出来ない人がなる、から、明らかにトレンドとなり、なり手が増えて行ったんですね。
その結果、芸人たちに多様性が生まれます。高学歴の人から、女性の人まで色んなタイプの人間が芸人になって行ったのです。
そうなれば、おのずとお笑い芸人に対する世間の見方は変わって行きますよね。
彼らはお笑いしか出来ない不器用な人というよりも、面白くて頭が切れる人と見られるようになっていたのです。そうすると、当然、これまでは芸人だからしょうがないと見過ごされてきたことが、いやいや、あなたたちもわたしたちと同じように社会のルールを守って下さいよ、という話になります。
さらには、世界の流れに押されて、日本の社会もコンプライアンスやガバナンスをうるさくいうようになったので、もはや芸人であろうとも、それは守るのが当たり前だと世間としては考えているのです。
でも、吉本という会社も芸人たちも、その多くの人がそもそも業界の人間としか接する機会が少なく、急激に変わった世間の意識の流れに肌感覚で触れる機会も少ないので、自分たちの見られ方がそんなにも変わったということにあまり気づいていません。
それは会社のお偉方や大御所の芸人になるほど顕著で、下っ端の社員や芸人からすると、上がああいう呑気な感じなのだろうか、ああいう感じでいいんだろうという話になってしまうのです。
そうなってくると、とにかく吉本の社員も芸人も、まずは社会からどれだけ自分たちが厳しい目で見られているかを認識し、芸人だからということを逃げ口上にせずに、業務を行っていく必要が迫られてきます。そうすると、もはや吉本が言うような自由、悪く言えば放任主義でこのまま行くことが出来ず、社員も芸人もキチンと管理をし、特に反社勢力とのかかわりがないように、これまで以上に気を配らなくてはいけなくなってきます。
じゃあ、どうすればいいのか? もう敏い人なら分かると思います。ようするに抱えている芸人の数、6000人というのが多すぎて来るんですね。吉本の規模でも、この数は多すぎますし、管理がそもそも出来る訳がありません。
コンプライアンスを遵守することを目標にかかげるならば、まずは管理ができる人数に所属する芸人を整理していく必要があります。
またNSCについても、卒業したらほぼ誰もが吉本に登録できるのではなくて、本当に才能があると講師が思う人間だけを登録するべきでしょう。
厳しいと思われるかもしれませんが、教育というのはただものを教えておしまいというわけではありません。才能の良しあしなどの厳しさをハッキリと教えてあげることも別の意味での教育でありますし、愛情だと思うんです。
今後NTTと教育事業を立ち上げていくプロジェクトがあるのなら、なおさらです。ただ儲ける事だけを考えるのではダメです。人間を作るということをもっとよく考え、その人の人生を預かっているのだということを親身に考える必要があります。
そして、闇営業についてももうダメです。反社勢力が見極めにくい今、これは常にリスクが付きまといます。
でも、それじゃ、若手が食べていけないという現実があります。吉本のそうは簡単に賃金を上げることも経営上は難しいでしょう。
ただこれもちょっと柔軟に考えれば、何かしらの解決の道はあると思います。個人的には、人材不足産業と吉本が提携すればいいと思うんですよね。ようするに例えば、慢性的に人手が不足している外食チェーンと提携をするとします。芸人は、芸人としての仕事がない時は、その提携先の店でバイトをし、芸人としての仕事が急に入った場合は、ほかの芸人が行くというシステムを吉本が作り上げればいいんです。
若手にとっては、急に仕事が入った場合に、バイトとの兼ね合いが難しい。だからこそバイトが出来ないという話になってしまうんです。吉本と提携する外食チェーンが共同でシフトを作って上げれば、若手芸人としては、芸人も出来るし、バイトでお金を稼ぐこともできる訳ですから生活と夢が二つとも成り立つわけです。
外食チェーンにとっても、人手不足が解消されるわけですから、ウィンウィンですよね。
何か、何でもすぐに出来ないじゃなく、これまで通りでいいでごまかすのではなく、ちょっとこういう工夫を考えてほしいですね。
若手としても、たとえ芸人としてダメだったとしても、バイトとして働くことで、社会生活そのものからドロップアウトせずにすむわけですからね。
契約書の問題や、歩合の問題も会社と芸人が納得できるような形でハッキリとしたものにしていかなけらばなりません。かねてからいわれている芸人労組を設立したほうがいいでしょう。
話は本当に、そういった基本的なことを整理してからなんですよね。
みんな、吉本を叩いていますが、吉本が嫌いなわけじゃないんですよね。吉本が提供してきた笑いに救われているからこそ、今の吉本の状況が許せないんだと思います。変わるきっかけが目の前にあります。これは大きなチャンスです。
これを逃さないよう、吉本の会社のお偉いさんは、芸人たちと真摯に向き合い、一方的に抑えつけるのではなく、対話によって解決方法を見つけて行ってほしいですね。同時に芸人も、変わらなきゃいけない部分は出てくると思うので、その点はちゃんと変わって行ってほしいです。
暗いニュースが多かった平成の中で、お笑い芸人たちが提供してくれたお笑いは本当にありがたかったです。国民はみんなそれはわかっています。
だからこそ、みんな、新しく生まれ変わった吉本がみたいと思っているんですよね。