何だか、闇営業問題が「そもそも嘘をついた宮迫が悪い」という意見こそが、まっとうな正論だという形で幕引きが大手メディアを中心に引かれようとしていますね。
不思議なのは、この論理のおかしさに世間の半分くらいが見ごとに呑まれてしまっているということです。しかも、反社の人間が喋っていることだけを鵜呑みにして、明確な証拠もないにもかかわらず、「宮迫の新たな疑惑」を打ち出し、印象操作までし始めている始末です。
「そもそも嘘をついた宮迫が悪い。彼が嘘をつかなければ、吉本はその体質的な問題をバラされずに済んだのだから」
という話なら分かります。吉本の体質的な問題な白日のもとのさらされることになったのは、宮迫さんのウソがきっかけであることは確かなのですから。
でも、宮迫さんが嘘をつこうがつくまいが、吉本の内部に、契約書の問題があり、社長のパワハラがあり、賃金の少ない若手が闇営業に走る土壌があり、さらには反社とのつながりの可能性があることは確かなんです。仮に宮迫さんに、新たな疑惑が出てきたところで、この部分は変わらないんです。
本当に怖いと思うのは、フジテレビやスポーツ新聞などが、露骨に「そもそも宮迫の嘘が……」理論を盾に吉本の体質的な問題から世間の目を逸らそうと印象操作に躍起になっていることです。
ネット上で指摘している人も多いですが、特にバイキングの坂上さんはひどいみたいですね。
いつもは冷静なコメントしているはずの立川志らくさんも、らしくないおかしなコメントを出しています。
これに至っては、「そもそも宮迫が……」という話だけではなく、世間が吉本の問題に口を挟むべきではないと釘を出している始末です。
あのぅ、吉本ほどの社会的影響力がある企業に、パワハラがあり、また反社勢力とのつながりの可能性もあるというのに、世間が口を挟むなとは一体どういうことなんでしょう。あれだけテレビで芸人が出ていて、彼らは世間の人たちの支持によって人気を得ているのですから、世間がステークホルダーであることは間違いないのです。
しかも、吉本にはクールジャパンの事業の一環で最大100億円ものお金が流れようとしています。言わずと知れず、これは税金です。国民の血税が使われるかもしれないというのに、世間に口を挟むなとは一体どういうことなのでしょう。
まあ、坂上さんも立川さんもダウンタウンの松本さんと共演していて、一刻も早く事態を収束してほしいという気持ちで、それらの発言をしているのかもしれませんが、テレビにあれだけ出ているということは、半ば公人と変わりありません。自身の持つ影響力というものを本当に考えてほしいですね。
吉本の問題については、ダウタウン世代以上の大物たちがこぞって経営陣の擁護をし始め、極楽とんぼの加藤さんもトーンダウンしてきたので、おそらく組織の体質的には何も変わらずに元に戻っていくでしょう。
メディアも、一部のものを除いては、ほとんどそもそも宮迫さんたちの闇営業の前に、吉本が公式に関わるイベントに振り込め詐欺集団がスポンサーになっていたという問題はほとんどスルーしています。宮迫さんの嘘よりも、明らかにこっちの方がそもそものはずなんですけれどもね。
個人的には、別に吉本が嫌いで攻撃をしたいんではないんです。反社の問題だって、芸能界と反社のこれまでの繋がりを考えれば、今の吉本はむしろよくやっていると思います。だからこそ、なぜちゃんとこの点について、自ら言及し、キチンと精査して、二度と起こらないように対策を発表しないのかが、それを隠してしまえばいいと考えてしまうのかが残念で仕方がないのです。
今の反社勢力は、フロント企業などを作っているので、とても見極めづらいです。結果的にそうだったという話もたくさんあると思います。わたしはそれは仕方ないと思います。それで、経営陣の責任を問おうとも思いません。ただ分かった時点で、ちゃんと対処はしなくちゃいけないんです。今回の話も、問題はそこであり、吉本が分かった時点で、ちゃんと公表をしていれば、問題はないはずなのですから。
それなのに、多くの人や組織が吉本に忖度をし、都合の悪い情報を隠そうとしています。忖度という言葉が、世間に根ずく程、忖度が問題になっているにもかかわらずです。
吉本は吉本で、ダウンタウン世代以上の芸人たちが一斉に経営陣を擁護する発言を始め、中堅・若手を抑え込もうとしています。
結局は力の強いものが、臭いものに蓋をし、既得権を持つ世代が、それ以下の世代を黙らせる。
一連の騒動の末に、見えてきたのがこの国の今の姿です。
臭いものに蓋をしても、今の時代は蓋を締めきれません。
若手を抑え込もうとすれば、結局若手が育たずに、その産業は衰退するだけです。
本当にこれでいいのでしょうか? 「そもそも宮迫の嘘が」で済ませてしまっていいのでしょうか?