FA移籍は悪? FA移籍選手に対するブーイングの是非

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2019/11/25/kiji/20191125s00001173201000c.htmlhttps://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2019/11/25/kiji/20191125s00001173201000c.htmlhttps://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2019/11/25/kiji/20191125s00001173201000c.html

何だろう。久々にイラっときた記事でした。
かいつまで話すと、プロ野球でFA移籍した選手に対して、古巣のファンからの球場内でのブーイングは酷い。モラルに反する。みたいな話なんですけれど。
最初に断っておきますが、わたし自身もブーイングはしませんし、決していいとは思っていません。確かに、選手からしてみればたまったもんじゃないでしょう。
ただこの記事にイラっときたのは、なぜブーイングが起きるかの背景には迫らずに、古巣の一部のファンのモラルだけに責任に帰しているというところです。しかも使っている言葉が、「日本人としての美徳」を持つべき。あのう、あなたは安倍晋三ですか?とツッコミたくなります。これは、いくらブーイングをしているファンに対してだとしても、ちょっとモラルハラスメントというか、マウンティングをしていると言われても仕方がないですよ。
何か気になってこれを書いた記者のことを調べたら、現在楽天番の人で、しかも西武から楽天に移籍した浅村選手とは、サシでごはんを食べる程の仲の人です。なので、記事の中で言及されている選手は、ほぼ浅村選手か岸選手に間違いないでしょう。
あのさ、そりゃ、生身の移籍をした選手と仲がいいんだから、その人はその人よりの感情になるに決まってますよね。ブーイングをしているファンだって、浅村選手とそれだけ親しい距離間にあるなら、そりゃブーイングなんてするわけないですよ。
問題は、そういう距離間にないファンがなぜブーイングしているかで、記者ならば、個人の感情を押し殺しても、まず情報を整理して物事をフェアに書くべきでは?と思います。ましてや、モラルにまで言及するのであれば、書いている人自身は絶対に中立の立場に立つべきです。立てなくても、その努力はするべきです。
そもそも、ブーイングしている人は、移籍した選手すべてに対してブーイングをしているわけではありませんよ。それは、どの球団もファンも同じですが、当然ブーイングされる選手もいれば、拍手で迎えられる選手もいます。実際に、浅村選手と同時にFA移籍した炭谷選手は拍手で迎えられています。
なぜそうした差があるのかは、どうして考えないんでしょうかね。
まあ、わざわざファンに訊くまでもなく、今回のこの記事のヤフーコメントにわんさかと書いてありますから、割愛しますが、FA移籍する経緯の中で浅村選手にしても岸選手にしてもその言動や態度にファンを逆なでするようなところがあったのは否めません。
もちろん、そこには古巣のフロントの問題であったり、選手にしかわからない感情があったり、そこに誤解があるのかもしれません。
それなれば、そこを取材してしっかりと書くことがジャーナリストとしての務めではないでしょうか?
しかも、そもそもなぜ浅村選手や岸選手にブーイングが起きたかと言えば、ハッキリ言ってタンパリングの疑惑があるからで、そこの部分のモラルには触れずに、メディアを使って一方的にファンにだけ日本人としての美徳を求めるのはいかがなものなのでしょう。
ブーイングに断固反対するのなら、ファンにだけ美徳を求めるのではなく、移籍に関して透明でクリーンな経緯を求めるような提言をしたり、もっと言えば、FA移籍の制度自体の問題に切り込むべきではないでしょうか?
日本のFA移籍の場合、メジャーと違って、ラグジュアリータックスもありませんし、FA移籍に対する補償もプロテクトをした上での人的補償があるだけで、ドラフト権の譲渡もありません。つまりは、取る球団と取られる球団がハッキリしており、そのことが取られる側のファンの苛立たしている一因になっているのは明白です。しかも親会社による資金の投入がFA移籍の資金源になっている、つまりは親会社の資本に大きさによって開きが生じてしまっており、まさに球界のバランスそのものが崩れかねないようなことになっているのに、そこは見事にスルーしておいて、ファンにモラルを求めるだけの問題にするとはね……。

記者がどういう思想を持とうが、誰に感情移入をしようが自由です。でも、モラルや美徳を求めることを口にするのなら、本当にフェアに記事を書いてほしいです。ただの感情論であるなら、素人にでも書けるのですから。
本当に日本の記事を読むと、ジャーナリズム精神が育っていないものが多く、また巨大な権力に忖度しているものも多くてガッカリします。