ソフトバンクホークスはなぜここまで強いのか ②他球団はどう対抗すればいいのか?

前回の投稿でソフトバンクホークスが近年強さを保っている理由を探りました。

①三軍制を活かした若手の育成
②補強ポイントに合った適切なFA選手の獲得
③自軍の有力選手を出来る限り出さない姿勢
④キューバ勢を中心とした有力外国人の獲得

以上のようなことをバランスよくおこなっているからこそ、好循環が生まれているという話でしたね。親会社のソフトバンクが投資会社であり、何が勝つために効率的なのか中長期的な視点で考えられているからこその今の強さがあるといえるでしょう。

ではそんなソフトバンクに対抗するためには他球団はどうすればいいのか。今回はそこに焦点を当てて考えてみたいと思います。

ソフトバンクにあって、他球団にないもの。それは莫大な資金と経験、そして有効な三軍制の活用ノウハウです。

資金については仕方ありません。とにかく少ないお金でいかに効果的なことが出来るのか、そのやり方を探るしかないでしょう。経験については、これは強くなっていくことでしか身につかないこともありますが、優勝経験が豊富な監督やスタッフ、もしくはベテラン選手を加入させるというのも一つの手かもしれませんね。

そして三軍制。これが中長期的に活用しきれているかどうかがソフトバンクとの差として一番大きいです。さすがに、そのことに他球団も気付き始めて育成枠での獲得が増えている球団も多いのですが、単純に三軍を作ればいいというわけではないんですよね。

あらゆる意味において機能していなければあまり意味がないんです。このことについては、楽天の新監督である石井監督の言葉を借りるのが一番いいです。石井監督は三軍をやりたいけれど、辞めていく選手のその先のことなどを考えると難しいと言っています。

このことからわかるのは三軍を健全に運営するためには、莫大な手間とお金がかかってしまうから難しいということが透けて見えます。楽天という、FA選手を積極的に獲得している球団ですら二の足を踏んでいるという点でも注目すべき発言ですね。

つまり、育成選手の一人一人の年俸は大した金額じゃないんです。でも、それをたくさん抱えれば抱えるほど年俸総額は高くなりますし、コーチなどのスタッフを雇うお金や、遠征費、それにそれなりの施設を建設・維持するためにもお金がかかります。ホークスと同じ規模で三軍を持つとなると、あの楽天が二の足を踏むほどランニングコストがかかってしまうんですよね。

しかもこれに加えて、ここがもっとも重要な点で、石井監督も強調している点ですが、育成選手を大量に獲得するだけ獲得して、数年後に見切りをつけたときに、どれだけそのセカンドキャリアに対して手を差し伸べてあげられるかが大事です。

ソフトバンクはこの点においては、育成選手獲得が始まった当初こそは、戦力外になった選手が犯罪を犯したりと色々とニュースになっていましたが、そういった失敗を踏まえて今では戦力外になった選手に対しても手厚く面倒を見ているそうです。

楽天の石井監督はこの点において、ソフトバンクの真似をするのが難しいと言っているわけですね。確かにソフトバンクがそれだけちゃんとしているとなれば、大量に獲って僅かな成功例を除いてはただ打ち捨てるだけというスタンスを取れば、社会的にかなり問題視されてしまいますからね……。企業の社会的責任が問われる今となってはそういう運営は非難の的となるでしょう。

三軍制をうまく活用したい。でもそこまでするお金がない。これはソフトバンク以外の多くの球団が抱えるジレンマです。でも三軍制をソフトバンク並みに活用しなければ、ソフトバンクとの差は今後もどんどん広がっていくでしょう。

じゃあ、どうすればいいか。それはいかにお金をかけずに三軍制をうまく活用する方法を見つけるしかないでしょう。

個人的にいくつか私案を考えました。

まず一つは、一つのチームで無理に運営をしようとしないこと。球団同士が協力し合うことで三軍運営のランニングコストがかなり減らすことが出来るはずです。例えば、近隣のチームで三軍がすでに存在しているところは、加入出来るところから先にリーグ戦を2軍と並行して行えばいいのです。

関東地域ではすでにそれが出来る土壌があるのではないでしょうか?巨人はすでに三軍がありますし、西武も施設を大幅に改修して育成選手の獲得に本腰を入れ始めました。そのほかにも関東には、ロッテ、ヤクルト、横浜、あと日ハムの二軍もいますし、社会人チームや有力大学もたくさんあります。ソフトバンクは、韓国に遠征などをして対外試合を組んでいますが、これを近隣だけでやる。つまりは二軍と同じようなことをプロに限らずにやれるところからやることで、少なくとも遠征費はだいぶ削減出来るようになるはずです。

二番目の提案は、ファンの力を借りること。個人的に一人のファンとして思うのですが、AKBなどに代表される身近なアイドルというコンセプトを真似て、育成選手に対してファンがもっと身近に接せられる機会があれば面白いと思います。具体的には、ファンが推しメンの育成選手を選んで、グッズや交流会などと引き換えにお金を落とすような仕組みを作り、それを選手の年俸の一部にあてる。ファンとしては、その選手を身近に感じてその成長を共に分かち合えますし、選手にとっても目に見える形でファンの応援の声が聞こえてくるので、かなり励みになると思います。もちろんアイドルと同じでファンと選手の距離を適度に保つ工夫が必要だとは思いますが、すでに他業種で事例があるやり方だけに応用もしやすいと思います。このアイデアの場合、選手がファンサービスを自然に考えるようになるので、野球以外の意味でも選手の社会性やメンタルを磨くいい機会になると思いますし、たとえ野球がダメだったとしても、その具体的にファンのことを考えるという経験が間違いなくセカンドキャリアに役立つと思います。もしかしたら、ファンからセカンドキャリアへのお誘いがあるかもしれないので、選手にとっても、球団にとっても考える余地がある話かなと思います。

三つ目はやはり、選手のセカンドキャリアに最初から備えることです。個人的には、球団がNPOを作り、そこを野球以外のことを選手に学ばせる拠点にするのがいいんじゃないかなと思っています。ちょっと思うのですが、プロになったからといって、一軍の試合にも出てないないのに、そんなに野球漬けにすることはないんじゃないかって思うんです。たとえば、高卒の18,9の子だったら、仮に大学に入っても、勉強しながら野球をやって伸びる子がたくさんいるわけじゃないですか。心・技・体のうち、心を学ぶことは、知識を得ることでかなり学べると思うんですよね。科目は色々とあると思います。メジャーを意識している子なら英語を学んでもいいですし、スポーツ科学的なものを学んで、野球に活かしてもいいと思いますし、セカンドキャリアを考えてITなどを学ぶこともいいかもしれません。個人的には、実務的なものに合わせて、基礎的な経済や法律、現代社会学などを学ぶこともかなり有用だと思います。知識を得ることでメンタルは確実に向上しますし、セカンドキャリアにある程度備えることも出来ますしね。

そして、味噌なのが、球団が直にこれをやるんじゃなくて、NPO法人でこれをやること。それによって、一般から広く寄付を募ることが出来るようになるんです。二つ目に通じる話になりますが、選手たちを応援したいというファンがある程度寄付をしてくれて、うまくそれでまかなえるようになれば、選手のメンタルの向上とセカンドキャリアに対する能力開発がほとんどお金をかけずに行えるようになります。選手を野球選手としてだけでなく、社会人として育てるという意味でも、なかなかいいアイデアだとは思うんですけれどもね。

以上とにかくランニングコストをカットしつつも、三軍制をうまく活用できないか頭を捻ってみました。
かなり突飛な話になってしまうかもしれませんが、それくらい思い切ったことを何らかの形でもやっていかなければ、なかなかソフトバンクに追いつくことが出来ません。
このままソフトバンクが優勝し続ければ、福岡以外で野球ファンが減っていってしまうことは必至です。

どうにかそれ以外の球団も強くなり、セリーグ、パリーグともに手に汗握るペナントやプレーオフがみたいです。
どのファンでもいいです。ファンも色々と意見を出し合って、プロ野球をまた盛り上げられたらと思います。

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