「大逆転はここから始まる」 トヨタがEVより“水素車”にこだわる本当の理由
EVシフトが急激に進んでいますね。
CO₂削減という大義を掲げて、英仏を中心としたEU勢が一気にEV化を推し進めています。
アメリカのテスラが燃料電池の性能において技術的なブレイクスルーを起こしてからEVにおける走行可能距離が伸び、今に至っているというわけですね。
気候変動問題における課題解決の一つとして、この傾向は歓迎するべき話のように思えますが、EUの主張をそのまま鵜呑みにしてはいけないという事情もあります。
ようするに、これって気候変動の問題にかこつけていますが、自動車製造における覇権争いに過ぎないという側面もあるんですよね。
実際、EUがガソリン車だけでなく、ハイブリットやプラグインハイブリットさえも禁止にしようとしているのは、間違いなくこれらにおいて先んじ、特許のほとんどを有しているトヨタを追い落とそうという意図があります。
つまり、EV開発において先んじ、技術的な特許を得た上で、自分たちが今後の自動車製造における枠組みを決め、自分たちがその中心に居座るんだという目的がはっきりとあるわけなんですよね。
日本や中国、ドイツなどが目立つ自動車産業において、英仏が巻き返しを図っているというところでしょう。
まあ、普通に考えれば、本当にCO₂削減を目指すがゆえに、EVシフトをしているのなら、一番手っ取り早いのは特許フリーにすることであり、それをしないというのなら、やはりCO₂削減は大義に過ぎず、ビジネス利用しているだけといわれてもしょうがないでしょう。
急激なEV化の流れに、出遅れた日本勢はそれぞれ違った反応を見せています。
そもそもEVシフトの急先鋒であるフランスのルノーと提携関係のある日産は、日本企業の中では最もEVシフトしています。現状、EVの販売数も世界7位です。
その他の日本企業はどこもまだEV車の販売は振るいません。
その中でホンダは、今後すべての販売車種をEVに変えていくと発表し、思い切った決断をしました。
これはEUで起こった流れに乗ることを意味していて、ある意味、時代の趨勢は決まったと判断したのでしょう。
一方で、明らかに独自の道を歩いているのがトヨタです。
そもそもハイブリット車でこの10年ほどは世界を陵駕してきたトヨタですが、トヨタが固執してきたのは、EVではなく水素です。
しかし世界はEV化にシフトしてしまった。
トヨタからすれば、焦っているはずですが、そんなことはなく、EVも作りながらも、やはり水素に固執し続けているんですよね。
まあ、なぜトヨタがEVシフトに簡単に乗っていかないかといえば、EVが本当に世界で普及するか懐疑的なんですよね。
実際、トヨタが懐疑的に感じているのはEVが普及するに伴う発電コストです。
EUは、フランスが原発にほとんど依存していますし、北欧は水が風による再生可能エネルギーでかなり電気がまかなえます。
ドイツは、再生可能エネルギーに足りない分はフランスから原子力エネルギーを借りていますし、ロシアから天然ガスも入ってきます。ようするにEUは、EV化をするためのエネルギー基盤がすでにあるんですよね。
でも、他の国はというと、日本を含め多くの国が未だに火力発電に頼っています。
これは発展途上国ほど顕著です。
つまり、これらの国がEV化するとなると、そもそも国中に充電スタンドを設置しなければいけないし、さらに発電コストも膨らむことになるのです。
日本だけでも30~40兆円かかると言われているのに、果たしてそんなに早急に世界がEVにシフト出来るか疑問に思っているんですよね。
しかもEV化のために火力発電が増えるとなると、気候変動対策と言う意味ではかなり本末転倒な話になってきます。
じゃあ、お金をかけて原発や再生可能エネルギーでどうにかしろといのうのは、かなり無理がありますし、それこそ勝手な話だといわれてもしょうがないですよね。
自分のところの安価な石炭を使わせずに、高いエネルギーと高い車を無理矢理買わせるという話になってきますからね。
ある意味、帝国主義的な匂いがしてきますよね。
そういった事情を考えれば、EUの都市部と、中国の上海とか深センあたり、アメリカの都市部あたりはある程度普及するかもしれませんが、それ以上そんなに早く出来るのか?ということですね。
トヨタはたぶん、そう読んでいます。
そうなると、多くのライバルたちがEV化してしまえば、ガソリン車やハイブリット車を作るところは限られてきます。
ということは、発展途上国での商売において、トヨタはかなり優位に立てます。
そもそもEUの市場は人口を考えると、すぐに頭打ちになりますからね。
テレビなどの白物家電で中国メーカーが世界を席巻したのは、途上国の事情にあった安い商品を売ることに重きを置いたからです。
人口的に途上国の方が遥かに多いですからね。
またトヨタが水素に未だにこだわっている理由は、乗用車だけを見ていないという点にあります。
これは上記の記事に載っていることですが、つまり乗用車だけみれば、確かにEVは走行可能距離を増やしてきているし、コストも安くなっています。
でも、長距離を走る車の主役は大型トラックであり、トラックを考えた時にEVはまだ頼りないです。
さらにEVと違い、水素エンジンは船舶や鉄道にも応用できます。
水素は地球上で最も多くある元素です。
確かに、船舶や鉄道が水素で動かせるようになれば、一気にエネルギー革命が起きる可能性があり、課題である水素ステーションの普及も一気に進みます。
水素なら、インフラこそお金がかかりますが、火力発電にそこまで頼ることもないですし、途上国としてもEVよりも受け入れやすいです。
トヨタはこれを狙っているんですね。
気候変動問題への課題解決の話が、いつの間にか各国の覇権争いの話になっているのは、正直ちょっと残念です。
あれほど、多様性、多様性と言っているのなら、その富を独占するべく先んじてやるよりも、多様性を持って、いかに脱炭素を可能にしていくのかを考えた方がいいのではないかと思います。
先進国の一部だけが変わってもしょうがない話ですしね。
地球規模で変えられる技術開発を皆でする方が、CO₂削減の大義にかなっているのではないかと思うんですけれどもね……
各自動車メーカーが社運をかけて賭けに出ていますが、果たして賭けに勝つのはどこか。
ここにAI活用化の話が入ってきますから、話はさらに複雑です。
どちらにしても、日本のメーカーも、ある程度淘汰されてしまうかもしれませんね。