「ブレットウィナー」
2017/カナダ、アイルランド、ルクセンブルク
アカデミー賞長編アニメ賞でノミネートされた作品ですね。
舞台は2001年のタリバン政権下にあったアフガニスタンです。
原理主義の名の下に女性に権利がほとんどなく、女性は教育を受けられないどころか、家にいることしか許されていません。
実際物語は、主人公である少女パヴァーナに本を読ませた罪で父親が逮捕拘束されたところから始まります。
外に出られる「男」がいないのに、女に「外に出るな」では、女は買い物や水汲みすらも出来ず、あとは死を待つしかありません。
苦肉の策は、女が髪を切り男のフリをするしかないのです。
この地域ならではのリアルな話ですね。
こういう話を観るといかに自分が西洋的な価値観の中で安全に暮らしているのかを思い知らされます。
わたしたちにとっては、あり得ない話であっても、紛れもなくこの話は当時のアフガニスタンでは、当たり前の話であったんですよね。
こうした話を形にすることで、世界に広めてくれたことは、本当にありがたいです。
この映画の制作に関わった人を敬服致します。
もっとエンターテインメントに寄せて作ってお金を儲ける方向に映画の内容を持っていくことも可能であったにも関わらず、あえてアフガンの女性が置かれているリアルを描き出すことに意味を見出したわけですからね。
ある意味で映画を作るという意味において、正しい姿勢で作られた作品であり、だからこそ世界中の人にとって必要な作品になったのだと思います。
間違いなくこうした話って、まだまだ世界中にたくさんあると思います。
なかなかその状況が変わるということはないのかもしれませんが、まずは世界に気付いてもらうためにも、作品として形作っていって欲しいですね。
物語の構成としては、主人公が語るお伽話と並行して話が進んで行ったのがとても良かったです。
ただでさえリアリティがある作品にテーマ性を分かりやすく浮き彫りにさせていましたからね。
それにしても、物語に出てくる男の人のほとんどが家父長制の中で自分たちに都合よく生きているので、その姿を見るのは、げんなりとさせられます。
でも、規模は違えど、家父長制にあぐらをかいている男の人は日本にもそこいらにいますからね。
この話って、他人事の話ではなくて、実は普遍的な話なんですよね。
しかし、1年前にこの映画を観たら、まだ今はタリバンから解放されたって、少しは救いのある気分になれたと思うんですけれど、アフガニスタンはまたタリバン政権下に戻ってしまいましたからね。
女性に対する扱いは変えていくとタリバン政権は言っていますが、本当にそうした部分は変えて行って欲しいです。