「MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝」 原作 高橋昌也/作画 近藤和久

「MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝」 
原作 高橋昌也/作画 近藤和久

これ、子供のときに読んでやたら印象に残った本なんですよね。
今思えば、原作が元ストリームベース(モデラー集団、「プラモ狂四郎」にも出てた)であり、「ガンダムセンチネル」を描いた高橋昌也さんで、作画がその後ガンダム漫画で一世を風靡する近藤和久さんなんで、面白くないわけないんですけれどもね、子供のときはそんなことまったく意識せずにただただなんだこれはと、物語に没入させられてしまいました。

物語はフレディリック・ブラウンというジオンの学生兵がモビルスーツのパイロットとして戦場に出ていく話なんですけれども、淡々と話が進んでいく中で、その空気感がとてもリアルで、否が応でも戦争というものがなんなのかを強く考えさせられます。
本編のガンダムでは、ニュータイプという特別な人が出て来て、その視点で持って語られるので、そう言う意味では本来の戦争のリアルさは少しボヤかされてしますのですが、この漫画においてはジオン軍という軍隊を何でもない一人の兵士からの視点で描かれているので、これでもかというほど、そうした時代背景に居合わせた普通の人たちの感覚がわかっていきます。
ていうか、いくら漫画の中の戦争だとしても、自分たちと同じ人間だからこそ、感じることは同じだということが身に染みてわかっていくんですよね。
しかもそれは、カッコよさや憧れと言うよりも、恐怖とか不安といった負の感情の方が圧倒的に多いんです。

この漫画を最初に読んだのは、確か小学校のころで、当時はそこまでちゃんとした理解を持っていなかったんですけれども、何だかすごい漫画だなと記憶に深く残ったんですね。
それで、その記憶を頼りに今読み返しても、やはりこの作品はいいと思います。
子どもの頃に思った感覚って意外と当たっているんですよね。

この作品が名作となった理由の一つとして、その短さが挙げらえると思います。
単行本一冊分なのですが、ヘンに長引かせるよりも、コンパクトに余計なものがない分、入ってくるものが大きい。
実はこの話、大人の事情(作画の近藤さんが「Zガンダム」の漫画を担当することになったため)によって、打ち切りとなった作品なんですが、それはそれでブツッと急に切れることによって、逆に印象深くなっているんですよね。
最後の1ページでその後主人公がどうなったのかが語られているんですが、何かそれまで色々と悩んできた主人公が簡単に……ってところに戦争というもののはかなさというか恐ろしさを後から感じさせるんですよね。
この作品、実は「ガンダム」史上初のオリジナル漫画なんですが、知る人とぞ知る名作だと思います。
こういう漫画を作れてしまうところにガンダムという作品の奥行きの深さを感じますね。

最後に余談ですが、この作品で描かれているザクⅡのデザイン、すごいカッコいいです。
子どもの時にも思ったんですけれど、これ、同じことを考えた人が当時も多かったみたいで、ガレージキット化されているんですね。