「肉体のジェンダーを笑うな」
著 山崎ナオコーラ
「人のセックスを笑うな」で有名な山崎ナオコーラさんの「ジェンダー」をテーマにした作品ですね。
ガッツリとこの問題に対して正攻法をとっているというよりは、SFっぽいアプローチをしている作品です。
山崎さんらしくユーモアを交えながら話を進めているので、とても読みやすい作品でした。
中編と短編が入り混じったものになっているのですが、収録されているのは、
「父乳の夢」
「笑顔と筋肉ロボット」
「キラキラPMS（または、波乗り太郎）」
「顔が財布」
の４篇です。
「父乳の夢」は、何だか男のわたしとしては読んでいて乳首がムズムズとする話でした。
わたしも子どもが二人いるので、ああ、授乳のときはこんな感じだったなと思い出しました。
当時、さすがに自分も父が出せたらとまでは思いませんでしたけれど、何とか妻の負担を減らす方法はないかと色々と考えていましたね。
読んでいて不思議と懐かしい感じがしました。
「笑顔と筋肉ロボット」
収録された中では、個人的には一番面白かったです。
笑顔を作ることを至上命題として生きてきたという主人公の設定が非常に面白かったです。
筋肉にまつわる急展開と、主人公の気持ちの変化も面白かったです。
「キラキラPMS（または、波乗り太郎）」
PMS自体は知っていましたが、それをこう受け取る男性がいるのかと。
奥さんの床のキャラが良かったです。
話が、ヒマラヤ山脈にまでぶっ飛び、現実なのか何なのかよくわからない話になっていったのが却って面白かったように思います。
全体的にジェンダーに関する作者の考察と言うか、想いがよく伝わってくる作品でした。
あえて男や女という言葉を使わないところに、山崎さんのスタンスがとても現れているように思います。