「中国の大プロパガンダ 各国に親中派がはびこる“仕組み”とは?」 著 何清漣

「中国の大プロパガンダ 各国に親中派がはびこる“仕組み”とは?」 
著 何清漣

中国のプロパガンダについて克明にレポートされている本です。
国内および国外に対してどのようなやり方でプロパガンダがなされていたったのか、また国外については香港、台湾、アメリカに対して特にどういったアプローチをしているのかが詳しく書かれています。

経済解放後特徴的なのは、その莫大な資金力を背景に既存の大手メディアを買収していくことで、都合の悪い情報を封殺させていくという手法です。
これは中国国内は当たり前の話で、注目するべきは香港や台湾に対しても力ずくでこの方法をとっているようです。
もちろん台湾などでは、直接的に外国が大手メディアを買収するというのは法律的に難しいのですが、狡猾なのは中国ではビジネスをした結果莫大な富を得た新中派の台湾人などを使って買収をしているんですね。
同国人であれば問題がないので、ビジネスを餌にそうした人物にメディアを支配させて、言論統制をしようというわけなんです。

ただ香港もそうですし、特に台湾などでは、そうした中国のやり方を市民はみんなわかっていて、多くの人がそうした新中的な大手メディアが言っていることを鵜呑みにはしていないようです。
そういう意味では、ネットが発達してよかったというところでしょうか。
ただ中国国内では、かなりこれも検閲されているので、厳しいのでしょうね。
香港も今後はより中国国内に近い感じになっていきそうでしょうし。

個人的に興味深かったのが、中国のアメリカに対するプロパガンダ。
香港や台湾と同じようにメディアの買収もしようとしますが、せいぜいがメキシコのラジオ局を買収する程度で、全米では聞けるらしいですけれども、大した効果はありません。
ただ中国は、米国において民主党系の議員やシンクタンクに近寄ることに成功したんですね。
民主党も当初は、中国に対して寛容で、仲間に入れれば、中国も次第に民主化していくと信じて疑っていなかったようです。
実際、中国のロビー活動を受けた民主党の議員が中国の意に沿った米国内での政策を推し進め、さらにそうした議員が引退したのちは、彼らがシンクタンクやコンサルティング会社に天下りをして、民主党の後輩議員たちにロビー活動をするという一つの流れが出来ていたというから驚きです。
中国寄りの人たちをパンダハガー派といい、逆にそうした人たちに反対する人たちをドラゴンスレイヤーと呼ぶそうです。

もちろん政権が変わり、トランプ大統領になってから、こうした流れがすべて断ち切られたという話ですが、そう考えてみると、問題ばかりのトランプ政権でしたが、トランプ政権になってよかったというところもあるというところでしょうか。
再び民主党に政権が戻ってからは、トランプ時代にかなり中国が危険だと喧伝されてしまったようで、パンダハガー派はまだなかなか復権出来ていないようです。

でも何だかこうしてみると、トランプ派が一概におかしいとは言えず、民主党のやり方も間違っていたというか、問題がたぶんにあるというわけですね。
ようするに、中国を含めて誰も彼もが利益追求のために動いているから、おかしなことになっているというところでしょうか。

中国のプロパガンダは、これまで拙い感じがしていましたが、今やアメリカ、香港、台湾だけでなく、特にアジアや南アメリカ、アフリカなのでは猛威を振るっているようです。
日本人の感覚ではなかなか想像するのが難しいかもしれませんが、もはや莫大なお金を背景に、世界では中国によるプロパガンダが浸透してしまってるようですね。