「寂しい丘で狩りをする」
著 辻原 登
ストーカやDV男とそれに怯える女性たちの話ですが、二十年以上前にこの内容を書いていますが非常に進んでいますね。
今でこそ、ストーカーやDVは悪いものだという一般認識がありますが、まだこの認識が甘かった時代に、それをしっかりと糾弾するかのように、こうした行為を行う人間を生々しく描いている点に好感が持てました。
物語は、レイプ被害に遭った敦子が加害者である押本の出所に対して、恐れを抱くところから話が始まります。
出所してしまえば、警察も誰も彼女を守ってくれない。
せめて彼が出所する日がわからないかと、藁をもすがる思いで頼ったのが、女性探偵のみどり。
実は、みどりもDV男である久我に付きまとわれているというのがポイントです。
本来なら、押本が出所する日を特定するところまでで探偵としての仕事は終わりなのですが、敦子が置かれている状況を他人事として考えることが出来なかったみどりは、続けて敦子をサポートしていきます。
ここから「狩る」者と「狩られる」者の追跡劇が展開されるのですが、面白いのが「狩られる」側であるはずのみどりがときに「狩る」側に立って、攻守交替するシーンがあるという点。
ただ追われるだけじゃなく、こうした反撃があるからこそ、物語をよりスリリングに感じますね。
ストーカーやDVを行う男たちが悪いという話にとどめずに、法律などがちゃんと整備されていない日本の現状に対して批判的な視点がしっかりと描かれているので、テーマ性を強く感じることも出来ました。
それにしても、映画ファンとしては、サスペンスだけじゃなく、映画の知識のあれこれも知れたので、その点も面白かったです。
山中貞雄とか懐かしい。