「点と線」 著 松本清張

「点と線」 
著 松本清張

松本清張さんの代表作ですね。
清張作品の中でも1,2位の人気を誇る作品です。

クリスティーの作品などにもいえることですけれど、後世に残る推理小説の共通しているのは、無駄なものがないということにつきますね。
謎に包まれた状況、ありえない状況を目の前に出されて、それを読者に追わせ、果たしてどうなるのかとドキドキさせつつも、後半に一気にほとんどの謎がクリアになっていくという、いわばミステリーの黄金バターンです。

そして清張作品にはここに社会性が加わります。
特に清張さんの作品において最大の特徴であり、個性とも言えるのが犯罪者の描き方だと思います。
追う側の視点に立ち、正義の側からだけ事件を論ずるのではなく、時に犯罪者側にたち、彼らが何を考え、何を目的にその犯罪を行ったのかということを非常に丁寧に描いているんですよね。
これって、なかなか出来そうで出来ない。
多くのミステリーがいかに斬新なトリックを考え、それを解いていくかに焦点が置かれている中で、どうしてもこの犯罪者の動機というものが安易なものになりがちなんです。
でも、清張さんはこここそを丁寧描く。
たぶん、清張さんにとって、作家として描きたいのはこの点に尽きるのかなと思います。

そしてこのことは、本作も例外ではありません。
この時代において、なぜ彼らが事件を犯したのか、刑事に深く考えさせ、それを鍵にしていくんですよね。
ここに軸があるから、犯罪者の像がしっかりと描かれることになり、自然に作品に社会性が帯びていくというわけです。

本作は典型的なアリバイ崩しのミステリーで、時間が経てばどうしても自然と古びてしまうジャンルなのですが、現代では通用しないトリックだなと思わせながらも、やはり読んでしまう、引きつけられてしまうというのは、この作品がしっかりと社会と人間を描いているからにほかなりませんね。

ちょっと映像を見て観たくなりました。
確か十年くらい前にビートたけしがドラマでやっていたような気がするので、探してみたいですね。