「眠れない夜は体を脱いで」
著 彩瀬まる
「手の画像を見せて」という不思議なネット掲示板にまつわる短編集です。
一つ一つの話がストーリーとして繋がっているわけではありません。
ただテーマとしてはしっかりと繋がっているんですよね。
それは「体」に対する違和感。
正直、個人としてはわたしは自分の体に対して、ここで出て来る主人公たちのように性や体に違和感を強く感じたことはありません。
まったくないというわけではないのですが、たぶん気づかずにすんできた人生だったと思います。
ただ、こうした違和感を覚えてしまう人っていうのは、実は結構して、著者はこうした「あるよね」を色々な視点から描いているんですよね。
それにしても文章が繊細な心の機微をしっかりと描いているなあ、と素直に感心しました。
女性の著者なのに、男性のキャラクターもしっかりと描いていて、だからこそ「体」をテーマにしたストーリーがしっかりと描けているんだと思いました。
何かこうした繊細なものを見ると、自分がいかに雑に生きているのかっているのがわかってきますね。
こうした内容はおそらく女性の読者の方に好まれると思いますが、ここで語られているテーマを考えると、むしろ男性に読んでもらいたい小説だなって思いました。
「手を見せてください」から話を作って行くっていうアイデアは、秀逸ですね。
個人的には、「小鳥の爪先」と「あざが薄れるころ」の二篇が好きです。