「わが夫 坂本龍馬 おりょう聞書き」 著 一坂太郎

「わが夫 坂本龍馬 おりょう聞書き」 

著 一坂太郎

今や幕末の志士の中でもダントツの人気ナンバー1であり、歴史好きじゃない人でも誰もが知っている坂本龍馬。

司馬遼太郎さんの「竜馬がゆく」の影響が多分に強いことは否めなくとも、その人生というか、男っぷりは今も人々との心を惹きつけています。

その中で、龍馬が選んだ妻が本作の主人公である「おりょう」です。

龍馬の生き方が魅力的であると同時に、龍馬の妻となったおりょうもなかなか魅力的な人物です。

よく知られたところでは、寺田屋事件ですね。

伏見奉行の捕り方が龍馬と三吉慎蔵(長州藩士)を捕らえるべく、寺田屋を取り囲んだのを風呂に入っていたおりょうがいち早く気づき、裸のまま飛び出して状況を伝え、助けたというものです。

そのほかにも、女郎と売り飛ばされそうになった妹を救うべく、悪者に対して啖呵を切ったという話や、龍馬と日本で初めて新婚旅行に行き、龍馬とともに天の逆鉾を引き抜いた話など、龍馬に負けじと彼女にも数々の武勇伝があります。

ただ多くの人の場合、あくまで龍馬の妻であるおりょうを知っているだけで、実際、龍馬とどんな関係にあったのか、また龍馬の死後彼女がどうなったのかはあまり知られていません。

本書では、遺されているおりょうに聞き書きしたものをまとめることによって、おりょうという人物がどんな人であったのか。

またそんなおおりょうを通して、坂本龍馬とは本当はどんな人物であったのかを浮き上がらせています。

龍馬の死後のおりょうは、実際、流れ流れて苦難に満ちたものになりますが、そこに人間臭さがあり、非常に興味深い話でした。

また彼女の口から語る龍馬は、やはり他の誰よりもリアリティがあり、彼女の話を聞いていくうちに不思議なことに龍馬の人柄の輪郭がおぼろげながらも浮かび上がってきます。

彼女自身が何かを成し遂げたわけではないのですが、あの時代のうねりの中心にいた個性豊かな女性が何をどう見ていたのかを知ることによって、そのとき空気感が非常に伝わってきますね。

龍馬ファンだけでなく、多くの歴史ファン、幕末ファンにも、これまでの話とはまた違った視点で歴史を感じることが出来るので読んでほしい本です。